もの想う時、ものを書く:山田詠美著のレビューです。

☞読書ポイント
もの想う時、ものを書く-Amy's essay collection since 2000 (単行本)
感想・あらすじ
今回のエッセイ集は、
2000年代に各紙誌で発表されたエッセイ、文庫解説、芥川賞選評を一冊に。
作家生活40周年記念のエッセイ集。
という形で出版されたそうです。40周年なんですね!ということは、私も彼女の作品を追いかけて40年ってこと!?と、改めて年月の速さに驚くのであります。そのうちの25年分書き綴ったエイミーの文章がまとめて読める嬉しさよ。
特に今回非常に興味深かったのは、「芥川賞の選評」です。山田さんがどの作家に票を投じたかもところどころ解る内容です。そもそも審査するにあたって、文章のプロたちがどのように作品を読んで感じるのかとても興味がある。これは本好きなら誰もが思うことだろう。
予想通りエイミーの選評は容赦ない。例えば、話題になっていた古市憲寿氏の作品についてピシャリと!当時マスコミでは高評価といった感じでもてはやされていましたが落選。その古市氏の落選コメントについてもエイミーは辛口。カライ!カライ。文末に「平成くん、さようなら」という作品タイトルをあえて呟くエイミー。くぅーー、すごい。
選評をこれだけまとめて読める機会はめったにない。文章を書く上での匙加減の難しさを感じました。とにかく候補作を何年も読み続けて来たプロの作家たちが吟味して選んだ作品。「芥川作品はさーなんかよくわかんない作品ばっか」「えーなんでこれが直木賞?」なんて私たちは言いがちだけど、やっぱりなんだかんだ言ってスゴイ賞なのだと改めて思った次第です。
そして今回面白かったのは、「追悼」で綴られた文章を読むことにより浮かび上がる今は亡き作家たちと山田さんの交流が胸にしみいる。野坂昭如さんと飲み歩いた日々とか、河野多恵子さんとの交流の中に常にあった「まつのはこんぶ」の話とか、安部譲二さんが出てきた夢の話とか、「追悼文」でありながら、映写機に映し出される映像を観ているような.....じんわり来ました。
家族やエイミーの日常のエッセイは読み慣れていて、2000年に入っても変わらず愛しい日々が感じられます。元旦那さんのことも結構出てきていたな。NYの時代の話とか、私自身もなんだか懐かしい気分になったのは、当時は今以上にエイミーの作品にべったりだったからなんだろうなと。
山田さんの周りの人々は当然ですが亡くなった方も多く、時の流れを感じずにはいられません。あの方も、この方ももういないのかと、知り合いではないにしろ、なにかこみあげてくるものがありました。
いつの時代もエイミーの「言葉」に関するちょっとしたボヤキがに共感。自分と違和感を覚える言葉が結構かぶるのですが、今回は「タイパ」って言葉。これ、私も嫌いなんですが、エイミーがバッサリ言ってくれ、スカッとした、と言うか、思わず吹いた(笑)
タイパがいい、と得意げに口にする男を見つけるにつけ、こいつ、セックス下手だろうな、と下品なこと思う。時短ってのも嫌だが、まぁ、タイパよりはましか。
彼女がこのように言うのにはちゃんとした理由がある。

ちなみにこの話は「贅沢な無駄を求めてーーーあとがきにかえて」より引用しました。エッセイ集を読み終えるまさにその時に、吹き出すほど笑って、そして「なるほど~」と腑に落ちる感じが爽快!これぞ、エイミーのエッセイの旨味だなぁと、改めて思いながら本を閉じたのであります。
山田詠美プロフィール
1959年東京都生まれ。85年「ベッドタイムアイズ」で文藝賞を受賞、作家デビュー。87年『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』で直木賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、2001年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』『賢者の愛』『珠玉の短編』ほか著書多数。(amazonより)
合わせておすすめ
今回のエッセイを読んでいると、こちらの作家にも興味が出てきます。エイミーが先生と呼ぶ宇野千代さん。亡くなるまでずっと交流があった河野多恵子さん。どちらも読むきっかけになりました。






