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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【感想・あらすじ・レビュー】自分以外全員他人:西村亨-日々の鬱憤、生きづらさを描く

 

 

自分以外全員他人:西村亨著のレビューです。

☞読書ポイント 

人生で希望を持つことってなんだろう。主人公の希望は「自死すること」。なぜ、彼はそんな悲しい目標を立てたのか。中年男性の心の裡のその息苦しさを感じつつ目が離せない展開。日々の鬱憤が渦巻きまくる。
 

自分以外全員他人 (単行本 --)

自分以外全員他人 (単行本 --)

感想・あらすじ 

ちょっと尖ったタイトルが気になり手にした1冊。西村亨さんの本は初めてです。いやぁ、暗くて鬱々とした話でしたが、何故だが目が離せなくなる不思議な引き込まれ感があります。たまたまTVをつけてやってた番組を見てたら、結局最後まで見てしまった....ってやつに近い。

 

さて、何が鬱々としているかというと、主人公の男性の心なのです。主人公柳田は44歳の独身男性。仕事はマッサージ師。真面目に仕事をし、一見どこにでもいそうな人物だけど、心の中は常に様々な感情が渦巻いている。最初は気楽に読んでいたのですけど、徐々にその感情の重みが身に沁みて来るような.....。

 

 

 

特に驚いたのは柳田の目標だ。目標って人が生きる上で持つものだと思っていたけど、死ぬこと自体が目標になっている人もいるのだ。

 

柳田はいつか自分が爆発するのではないかと懸念し、その前に自死しようと考えている。家族にすこしでも多くお金を残せるようにと死亡保険も加入している。保険がおりる45歳まで、今は耐え忍びながら生きている。

 

せっかく付き合ってた彼女とも、大好きだけど自分と付き合うことで彼女が不幸になると思い込み恐くなって別れてしまったり、勤務先での同僚やクレーマー客との話、親の呪縛等々、日々の鬱憤、憤りが何気ない生活からいくらでも吹き出してくるような話が次々と登場する。

 

ラストは思わぬ方向から球が飛んできたって感じです。どうなるんだろうって、釘付け状態でした。

 

 

 

著者の西村さんを投影した小説のようです。「死にたい」という気持ちがいつもあったそう。幸い西村さんは書くことで救われたようですが、ここに来るまで相当生きづらかっただろう....ということが、本作からリアルに伝わって来ました。

 

これだけ鬱々とした小説なのに不思議と嫌な気分にならなかったのは何故なのかな....って、読後に自分自身の心を覗いてみたくなりました。

 

西村亨プロフィール

1977年鹿児島県生まれ。東京都在住。鹿児島県立鹿児島水産高等学校卒業。2023年、「自分以外全員他人」で第39回太宰治賞受賞。(Amazonより)