絵葉書のように:武田百合子著のレビューです。
☞読書ポイント
感想・あらすじ
『単行本未収録エッセイ集「あの頃」から、「武田泰淳との思い出」「歩く」「食べる」、三つのジャンルのエッセイを厳選。夫亡き後の長い時間のなかでゆっくりと発酵した夫や友人たちへの思い、街を歩き、見たもの、食べたもの、感じたことをそのまま、はっとするような文章で切り取ったエッセイ集。
ということで、既読でした(笑)武田親子の本は見逃したくない!って思いが強く、新刊が出れば飛びつくわたし。内容確認せずに再読コースへ。なんかこれ知ってるなぁ~って、途中まで気づきませんでした。
覚えていないエッセイも数多くある中、もう一度読みたかったエッセイもぽつりぽつりと出て来てくるので嬉しい。桜上水へ家族揃ってのお花見の話「櫻の記」が本当に大好き。何度読んでもまたすぐに読みたくなる。この話に再び会えただけでも良かったと思う。
前半は泰淳さんの闘病生活、そして最愛の人を亡くした後の百合子さんの日常を綴ったものが多い。ちょっと暗い話が続くけど、ご夫婦と交流のあったご友人の話はどれも心温まる。
後半は昭和の赤坂界隈の話や佐渡や海外の旅行の記が。このあたりから百合子さんの本領発揮、大好きな文章を堪能!あ~こんな文章が書けたらなぁ~ってくらい、情景が浮かび上がって来る文章に酔いしれました。
実際見たことがない風景なのに懐かしく感じたり、人々の会話がすぐそこから聞こえるように感じられたり、自分がその場に居るかのように感じられる。そんな臨場感あふれる文章が本当に魅力的。瀬戸内晴美と武田百合子のお二人には、ちょっと昔の日本の風景を本の中でたくさん見せてもらっています。
読んでいると遠い昔のようでもあり、つい先日のような気持にもなるのですが、百合子さんは亡くなって30年も経ったそうなのです。そんな彼女の書いたものをまとめる花さん。私たち以上にいろんなことを思い出しながらまとめたのだろうなぁ。
装幀のスワンボートは花さんが撮影したものだそう。こちらを見た編集部の方のひと言に、なんだかこちらまでもが目頭が熱くなりました。
ということで、好きな随筆家の文章を読む時間は至福ですね~。本を閉じてまた最初から読んでもいいくらい(笑)
武田百合子プロフィール
1925(大正14)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。51年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。77年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、79年、『犬が星見た―ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。93(平成5)年死去
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