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【感想・あらすじ・レビュー】船玉さま 怪談を書く怪談:加門七海

 

 

船玉さま 怪談を書く怪談:加門七海著のレビューです。

☞読書ポイント 

加門さんの怖い話は、日常に溶け込んでいる。見える方も見られる方も、自然な形で出会うだけに実際の現場はそれほど怖くないのかもしれない。でも不思議だと思ったことを掘り下げてみると意外なことを知ることになる。そこが一番怖い。

 

船玉さま 怪談を書く怪談 (角川ホラー文庫)

船玉さま 怪談を書く怪談 (角川ホラー文庫)

感想・あらすじ 

 

やっぱりこの方の書く話はいつでも怖い。何が怖いって、怖いことは私たちのすぐ近くにいつもあるんだなって思わされること。怖い話って怖いけど自分はたぶん大丈夫だろうってどこか他人事。でも加門さんの話はそれだけでは片づけられないようなものが多い。もしかしたらわたしも・・・・と。

 

今回小説だと思っていたのですが、がっつり著者の体験談的なものでした。ご本人は取り立て霊感とか見えたりする人じゃないのよ~って雰囲気なんですが、なぜかこういう話が集まってきてしまうのも、日々怪談と接しているからだろうか。いや、加門さんのお母様もなかなの怪談好きらしいから遺伝?とにもかくにも、加門さんの周りにはそういう話が渦巻いている。

 

印象的だったのは「浅草淳喫茶」「茶飲み話」。どちらも怖がらせるような話とは思えないほど日常的な風景で読んでいてむしろ楽しかったりもすのだけど、「やはりそうなのか....」的な怖さがあった。「浅草純喫茶」は、浅草によく来ていた永井荷風の話なんかも織り交ぜながら興味深く読める一面も。この純喫茶で加門さんはある女性店員に違和感を持つ。

 

加門さんがこの喫茶店で見た女性の正体は....ということなのですが、やはりはっきしたことはわからない。しかし、加門さんがこの話をお母様にしたことにより、さらに謎は深まるのだけど、浅草という土地柄を絡めて推測すると、いろいろ興味深い解釈ができる。そんな話でした。

 

こういう話を読むと、お化けや幽霊って夜とか人のいないところに出るってイメージをひっくり返されるというか....。でも、自分だけが見えているのか否か、その曖昧さがクッションになって怖さが少し和らぐ面もある。これがしっかり検証されちゃうと怖い。加門さんの話はその瀬戸際のところなので、なんとなく余韻を残しつつ話は去っていくイメージだ。

 

 

 

 

「茶飲み話」は、実家で知人がまさにお茶を飲みながら話したものを再現。噂話的に持ち込まれた知人のラフなトークで展開される。よくある感じで気軽に読んでいたけど、どんどん話が深刻化していく様子が怖い。こちらは「木の祟り」的な話ですが、やはり私たち人間より長く生きている木の扱いは、本当に気を付けたほうがいい。

 

ということで、どの話もコンパクトに書かれていますが、いろんな話が登場し、その都度ゾクゾク、ドキドキさせられました。久々の加門さん、満足モードで読了。

 

加門七海プロフィール

東京都生まれ。多摩美術大学大学院修了。美術館の学芸員を経て、1992年に『人丸調伏令』で作家デビュー。オカルト・風水・民俗学などに造詣が深く、伝奇小説、フィールドワーク作品を中心に活躍。2024年春公開の映画『陰陽師0』の呪術監修を務める

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