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【感想・あらすじ・レビュー】方舟を燃やす:角田光代

 

 

方舟を燃やす:角田光代著のレビューです。

☞読書ポイント 

私たちは子どものころから何かを信じて生きて来た。「ノストラダムスの大予言」にドキドキしたり、「口裂けおんな」に怯えたり。これらの感情も「信じる」ことが土台にある。本作はある二人の男女の「信じること」に焦点を当て、その後の人生を描いていく。信じることってなんだろう?という根本的な部分を考えさせられる物語。

 

方舟を燃やす

方舟を燃やす

感想・あらすじ 

久しぶりの角田さんの長編です。本を開くと何の迷いもなく物語の世界に没頭させてくる角田さんの安定した文章にホッとする。しかし内容は結構重めな滑り出し。

 

本作は主に二人の男女のそれぞれの人生を交互に描いていく。1967年からはじまる話はバブル世代の人々の生い立ちって感じなので、この時代を生きて来た人々にとっては、懐かしい出来事や恐ろしい事件まで振り返る時間になります。

 

大地震やコロナなど命の危機が迫るという経験もして来た私達。「ノストラダムスの大予言」に怯え、いつかみんないなくなる時が来る.....と信じていたあの頃も無事通過した。けれども今でもあの時の何とも言えない恐怖と高揚感は覚えている。

 

 

 

 

本作で特に夢中になって読んだのは柳原飛馬の幼少期の話。母親が病気で間もなく亡くなってしまうことを知った子供の飛馬。その様子が胸が苦しくなるほど可哀想で可哀想で。そして母親の死がもたらしたものは、彼の人生に大きな影を落とし、何かあるたびに当時のことを思い出す。にしても、院内で他の患者さんたちの話をたまたま聞いてしまったばかりに...あのちょっとした時間がなかったら、彼がここまで苦しむこともなかったかも....と思うとやるせない。

 

もう一人の主人公・望月二三子は、結婚して子供が生まれ、家族には体に良いものを食べさせたいとクロビオティックの食事にこだわる。マクロビにこだわりすぎた二三子。彼女の真面目さが逆に家族を振り回してしまうという。その空回りしている感じがなんとも切ない。

 

ノストラダムス、宗教、口裂け女、コックリさん、SNSのデマ、噂、ワクチン等々、私達はいつも何かを信じる・信じないの間で揺れて来た。特に今回のコロナで多くの人が「分からないもの」に対して、自分なりに情報を集め、何が本当で正しいのか判別してきたと思う。SNSの登場と共に、目にする情報も増えすぎて、その中から自分なりに選ぶ、信じることがどんどん難しいものになっていくという経験もしました。

 

 

 

 

なんの接点もない飛馬と二三子。ふたりはある場所で出会い知り合いになる。ここに来るまで紆余曲折、それぞれの人生を見て来た読者は、彼らの「今」を知ることになる。両者、これまで満たされなかった部分がようやく報われる感じになるのだけど、時代はすぐそこにコロナが待ち構えている。

 

ラストは個人的にはいまひとつスッキリとまでは行かなかったなぁ。でも、ここに来るまでのふたりの人生に、圧倒的に引き込まれていたので、ラストはこれはこれで....という感じでした。

 

ということで、昭和、平成、いろいろあったなぁ~。今のようにSNSもなかったけど、ちゃんとデマや噂は全国的に広まっていたものね。「うそだー」って言いながらも、口裂け女が出ると噂されていた公園の近くは絶対行かなかった....なんてこともあった。(まんまと信じていた)そんなこんなで、ようやく令和に戻って来たという感じで読了です。

「信じるってなんだろう?」って問いかけが、閉じた本から再び聞こえて来た。

角田光代プロフィール

1967年神奈川県生まれ。作家。90年『幸福な遊戯』(角川書店)で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』(幻冬舎)で野間文芸新人賞、05年『対岸の彼女』(文藝春秋)で直木賞、07年『八日目の蝉』(中央公論新社)で中央口論文芸賞を受賞。ほか受賞・著書多数。 絵本の翻訳に『ヤコブと七人の悪党』(集英社)、『だいすき。』『ぼくは こころ』(学研)などがある(絵本ナビより)

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