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【レビュー・あらすじ・感想】ワシントンハイツの旋風:山本一力

 

 

ワシントンハイツの旋風:山本一力著のレビューです。

☞読書ポイント 

かつて東京の代々木にはアメリカ軍の兵舎・家族用居住舎があった。その近所に住み、新聞配達をしていた青年とアメリカ人との交流、そこから彼がどのようにして成り上がっていくかに注目。オリンピックや大阪万博に沸き立つ日本の姿も描かれ見どころ満載。

 

感想・あらすじ 高度成長期に生きるひとりの男の生涯。早熟だなぁ。

 

まずは「ワシントンハイツ」とは何ぞや?って話なのですが、これは戦後、アメリカ軍が東京の代々木に有していた兵舎・家族用居住宿舎などからなる軍用地とのこと。現、代々木公園、国立代々木競技場、NHK放送センター界隈である。そういえば何度か映像や画像で見たことがあるけど、名前は知らなかったなぁ。

 

本書はその場所を舞台に当時の様子を描いた小説とばかり思っていたのですが、どちらかというと、高知から上京した男の半生を描いた作品であった。もちろんワシントンハイツはこの男の人生に深く影響を与えた場所でもあり、当時の雰囲気も十分感じ取れる。そして、時代は高度成長期。オリンピック、大阪万博などで沸き立つ日本の様子も伝わって来る内容になっている。

 

 

物語の前半の舞台は高知。主人公の謙吾の思春期と友情の話が中心。所謂、性の目覚めなども包み隠さず描かれる。やがて謙吾は母と妹のいる東京へと向かう。仲の良かった友との別れのシーンに続いて、東京での生活が始まる。代々木八幡で住み込みの新聞配達の仕事をする傍ら、工業高校に通う日々。

 

謙吾の担当配達先はワシントンハイツ。彼はこの時期、ワシントンハイツでアメリカ人の知り合いを作り、少しずつ英語を習得。学校を卒業後、ツーリストに就職するのだが、ワシントンハイツで得た英会話がこの仕事で存分に発揮することになる。

 

サクセスストーリーというわけではないけれど、何も持たないで上京した少年が、たった数年でここまで成長していくという過程がすごい。当時はこうした人々がたくさんいたのだろう。

 

そしてこの謙吾という男は、女性関係もなかなかのもの。かなりのおませさんであった謙吾は、うんと年上のピアノ教師との不倫を経て、その後、様々女性たちと付き合う。家柄の違いなどから数度の別れも訪れたけど、彼の周りから女性の気配が消えることはない。恋愛のゴタゴタは、ちょっとハラハラしたりもするのだけれども、本人はわりとあっけらかんとした性格なのか、ものすごい修羅場になることもなく済んでいる。

 

 

 

 

後半は当時まだまだ珍しかったアメリカへの添乗の話も。ここでは大きなアクシデントに見舞われ、これまでの勢いからトーンダウン。ここからまた彼がどう這い上がっていくか....と言ったところだ。

 

結構生々しい小説で、作者のプロフィールを拝見したら、経歴がまんまでした(笑)山本氏のその後の人生も本当に色々あったようですね。そして「あかね空」の作者であったことも今回知りました。舞台鑑賞したことがあるのですが、作者が山本氏だったとは!そういえば時代物の作品を多く書かれているようで、どちらかと言うと本作の方が異色だったのかなと。

 

ということで、20代までにこんないろんな経験をしちゃった男性って感じで、昔は猛スピードに大人になっていった人々が多かったのかしらん?なんて思ってしまいます。確かに見た目も昔の10代、20代ってやたら大人っぽいですよね。

 

山本一力について

1948(昭和23)年高知県生れ。東京都立世田谷工業高校電子科卒業後、様々な職を経て、1997(平成9)年『蒼龍』でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。2002年、『あかね空 (文春文庫)』で直木賞を受賞。(新潮社著者プロフィールより)

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