ハロルドとモード:コリン・ヒギンズ著のレビューです。
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感想
短い期間だけど、人生ががらりと変わってしまうほどの恋
歳の差がある恋愛や結婚はもはや珍しいものではなくなった。少し前までは10歳も女性が年上だと結構話題になったものだけど、今は10歳くらいならそんなに驚かなくなった。
本書はまさに年の差があるふたりが出会い、惹かれ合って行く話なのだけどちょっと変わったふたりなので、物語が少々ぶっ飛びモード。それゆえに何が起こるかわからない。ハプニング続出、ハラハラさせられるシーンが多い。
ハロルドは19歳の青年。狂言自殺が生きがいで、愛車は霊柩車だったりする。そんな息子にやきもきしている母親。どうにか彼を更生させようと、カウンセリングを受けさせたり、軍隊に入れようと試みたり、終いにはお見合いさせたりと躍起になっている。
そんな母親を横目にハロルドは以前墓地で見かけた老女に声をかけられる。教会で。彼女は79歳でひたすら自由に生きている人物。ハロルドはこの自由なモードと出会ったことにより、みるみる世界が広がっていく。
とにかくモードの破天荒な行動、お転婆っぷりに、ハロルドだけではなく、読者の私たちも釘付けに。年齢と言う枠を超えちゃった気力や体力に呆気にとられるシーンもたくさんあった。このバイタリティは一体どこから来るのだろうと。
そんなモードの過去については多くを語られることはない。しかし、彼女の手首に刻まれたものから、思いがけない彼女の過去が見えて来る。重い過去を背負って来たからこそ、今の自由な彼女の振る舞いが、輝いて見えるということは覚えておきたい。
さて、ふたりの楽しい時間はどこまで続いていくのか。これがまた意外な形で幕が下りることになる。なんだかわちゃわちゃとしていたのに、あっという間にラストがやって来てポカーンとしてしまう。しかし、最後までモードはモード。「そう来たか」とつぶやいてしまう。
舞台が話題になって手に取った作品。いろんな意味で予想とは違った内容だったけど、結構楽しめました。笑っちゃうシーン、びっくりするシーン、ロマンチックなシーン等々、様々なシーンが登場する。感情をあちこち漂わせながら、ふたりの恋の季節を見届けました。にしても、ほんと、二人とも個性的だったなぁ(笑)
りすさんからのnext本
年の差の恋愛と言ってパッと思い浮かべたのは「センセイの鞄」。こちらは「ハロルドとモード」と違って、しっとりした話ね。くっついたり、離れたり。もどかしくて切ない恋の話なんだよ。