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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】すべてのことはメッセージ小説ユーミン:山内マリコ

 

 

すべてのことはメッセージ小説ユーミン:山内マリコ著のレビューです。

 

 

☞読書ポイント 

デビュー50周年を迎えたユーミンこと松任谷由実。ユーミンが、ユーミンになるまでを作家・山内マリコ氏が、小説形式で綴った一冊。ユーミンファンはもちろん、あまり知らない人も小説として十分楽しめる内容。呉服店、基地や八王子遊郭跡界隈の様子、学校生活、70~80年代の音楽、ミュージシャン、音楽業界等々、ユーミンの青春時代と昭和の眩しいきらめきが再び浮かび上がる。

感想

ユーミンと昭和の時代を駆け抜ける!

昨年から何かと話題の多い松任谷由実さん。それもこれもデビュー50周年ということで、メディア出演もかなり多くなっている。そんなユーミンの小説が出るとか。しかも書いたのは山内マリコさん。....って、一体どういう繋がりなんだろう、いや、お二人が作り出すものは、どちらも大好きなのでまったく異論はないのだけど。ということで、ユーミンのオフィシャルサイトを覗いてみたら、ユーミンはこんなことを言っていた。

山内マリコさんの獰猛な取材力とインタビューに、記憶のボタンが次々とクリックされ、私は幼少期を、青春を、サーフィンしまくった。目眩く楽しかった。(一部引用)

山内さん、ユーミンの大ファンなのでしょうね。おそらくファンである私たちと同じ熱量をもって取材されたのでしょう。それを小説にしちゃうところがプロのお仕事、さすがです。

 

 

 

さて、読んでいくと解ると思うのですが、本書は「荒井由実」と言う名を使わなくても、小説としてとても面白いということを感じるだろう。例えば、ユーミンの実家である呉服店の話とか、基地や八王子遊郭跡界隈の様子、学校生活、70~80年代の音楽、ミュージシャン、音楽業界等々、日本が「さぁ、これから!」って時の、人々の活力が満ち溢れていた昭和の時代が存分に感じられる内容なのです。

 

ユーミンの青春時代があった日本はあらゆるものがキラキラしていた。もちろん、ユーミンの才能はどうやって開花していったのか?というのも読みごたえがあるのだけど、その背景になっている部分も楽しめる。

 

今のユーミンがあるのは、一体何が影響したのか?ってことがこの本を読むと理解できるのですが、とにかく小さい時からなにをするにもバランスが良い。呉服店で日々「和」の物に接している一方、基地のお友達と遊んでアメリカの文化にも早いうちから接している。お稽古ごとも三味線を習ってみたり、ピアノを習ったり。和洋折衷、吸収できるものはなんでも自然と自分のものにしている。

 

恵まれた家庭環境に育ったというのもあるけれど、何かに偏るということなく、常にバランス感覚みたいなものを養いながら大人になった人だと感じる。

 

こっそり夜中に家から抜け出して、夜遊びするユーミンなんかも登場する。一見ハチャメチャな感じもするけれども、なんだろうね、絶対道を踏み外さないっていう安心感があるのも、やはりこの人の賢さと自分をきっちり持った強い芯の部分があるからなのだろう。

 

後半は音楽関係の話に移行していく。残念なことにこの本を読んでいる途中で、YMOの高橋さんの訃報が流れた。ユーミンとたくさん交流があったことを本書で知った矢先だったので本当に残念だ。

 

そして正隆さんのことは、本書ではほんのちょっとだけ。ああ、こんな感じで知り合って付き合っていったのかと、中央フリーウェイの景色を想像しながら、二人の会話を覗いた気がした。

 

 

私が「翳りゆく部屋」を初めて聞いたのは高校生のとき。イントロのパイプオルガンの重厚感、すごい曲だと思ったものだ。こんな曲を10代そこそこで作ったユーミンはやはりただ者ではなかったし、この曲を感性豊かな10代で聴けた自分もラッキーっだったなと今にして思う。

 

松任谷由実になってからの曲との方がお付き合いは長いけど、最近聴きたくなるアルバムは「MISSLIM」「14番目の月」など、何故か荒井由実の時代のものが多い。「ひこうき雲」の歌詞が何故にあんなにも切なくチクチク胸を刺すのか、本書を読んで謎が解けた気がする。ひとつの歌詞に込められた想いはご本人しか解り得ないものだろうけど、背景を知ることによってまた一段と深く沁み入る曲となった。

 

面白かったです。もう少し読んでいたかったなぁ。ファンの方は、知らない部分がたくさん知れる、そうでない方は、小説として普通に楽しめる、そんな一冊だ思います。

 

余談ですが、ユーミンのお母様と母の大学が一緒だったので、そのことを母に話したら「読みたい!」と。ってこで、母も巻き込みました。(笑)

 

最後にユーミンの音楽をリアルタイムで聴けた世代に生まれて本当に良かったなぁと、改めて思いました。たくさんコンサートも行けたし、FM東京のラジオも学校から帰って一目散に聴いていたなぁ。自分の青春時代に常に流れていたユーミンの音楽。

読み終えて、「人生を豊かにしてくれてありがとう」と、ユーミンに感謝の気持ちを伝えたくなった。

 

 

りすさんからのnext本

ユーミンの生い立ちがすっかり分かったところで、今度はユーミンが色々な著名人と対談している本を紹介するね。とにかく対談相手の豪華さが際立つ一冊。お亡くなりになった森光子さん、森英恵さんや石原慎太郎氏も登場。対談相手に合わせたユーミンのファッションも注目の一冊よ。

 

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