死に方がわからない:門賀美央子著のレビューです。
☞読書ポイント
人はひとりで死ねないものだと、しみじみ。
まさにタイトル通り「死に方がわからない」という問題を取り上げた1冊。いや、これは自ら命を絶つとかの話ではない。死ぬ前にしておくこと、死んだ後のことをどうするか?という話。
「え?どういうこと?」って思った方は、ある意味幸せな方かもしれません。もし自分の身に何かが起きても、あとのことを任せられる誰かがいるってことであまり考える必要性がないかもしれません。がしかし、、、、これはもはや身寄りがあるないに関わらず、誰にでも起こり得ることと捉え、心して読むべき本だなぁと感じました。
筆者のように元気なうちに、色々調べておき、いざとなったら極力人様に迷惑をかけることなくこの世から去る.....というシミュレーションは、ちょっと辛い作業ですが、準備は決して無駄なことではないでしょう。
さて、筆者の門賀さんは50代のフリーランスで独身ひとり暮らし。そして一人っ子。年齢的にもそろそろ人生のゴールを見据えるなか、様々な不安が浮かび上がる。そのひとつに「孤独死」があるわけだが、これを阻止するにはどうしたらよいか?
これはなにも門賀さんのような状況の人だけでなく、ひとり暮らしをしている人なら一度は考えたことがあるのではないだろうか。通勤している人なら欠勤続きで職場の人に最悪見つけてもらえそうだけど、門賀さんのようにフリーランスだと、発見が遅れる可能性が。仕事を引退したらなおさらのこと。
とにかく「腐りたくない」という強い思いから、門賀さんはあらゆる形で発見されるよう準備を試みる。実際、色々なところにアプローチするものの、やはり自分に合う合わないが出て来る。
また、命に係わる入院とか、臓器提供とか、葬式、納骨、その後の遺品整理、銀行口座の閉鎖など、誰にしてもらうか等々、とにかく死んでも誰かにお世話にならなければならない。家族が居ればそれで済む問題もひとり身だとそうはいかない。「いざ」という時に誰にお願いするか、できるか。これは本当にシリアスな問題です。
こうした問題に真摯に取り組んでいる自治体も増えて来ているそうだ。特に横須賀市はすごい。自分の住んでいる自治体がどこまでこれらに取り組んでいるかも知るきっかになると思います。
とにかく考えれば考えるほど不安にもなるし、どこまで準備すればいいのか戸惑う。第一、この先、自分が何歳まで生きるのか、生きたとしても自分の意思で決められるだけの力が残っているのか。このあたりが見えないだけに、結局「まだいいか」と先延ばししたくなる。
しかし、門賀さんを見ていると、全部は解決できないにしても、ある程度準備しておくことで自分自身が安心できるし、何かあった時に少しだけ冷静に動ける、いわば「迷わない地図」を持つことが出来るように感じました。
メディカルソーシャルワーカー(MSW)の存在、検体について、リビングウイル、行政サービス、リビングニーズ特約等々、実際、その状況にならなないと知れないようなことにも触れ、情報としてためになった部分も多い。
人は一人では死ねないってこと。死んだ後も必ず誰かのお世話にならなくてはならない。そして、これらの問題を抱える人は近い将来確実に多くなるので、より良いサービスやシステムも出て来るはず。アンテナ感度を良くし、備えたいものです。
ということで、ちょっと気持ちが荒み焦りますが、読んでおいて損はない。サラーっとサービスを紹介する本はたくさんあるけど、本書は現実問題を直視しつつ、あらゆるケースをシミュレーションする。それゆえに著者の考え方などを綴る部分も長く、本題になかなか辿り着けない感もあった。まぁ、それも含め、様々なパターンを想像することは大事だと感じました。
【つなぐ本】本は本をつれて来る