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【レビュー・あらすじ・書評】しろがねの葉:千早茜

 

 

しろがねの葉:千早茜著のレビューです。

☞読書ポイント 

戦国時代末期石見国、仙ノ山と呼ばれる銀山の間歩(坑道)が舞台。「山を削り続けることは、命を削り続けること」―厳しい世界での彼らの生きざま、それを支える女たちの姿。生と死を考えさせられる、これまでにない千早さんの歴史長編。

直木賞受賞、おめでとうございます!

 

感想・あらすじ(ネタバレなし)遠い昔の闇の中から浮かび上がる生と死と。

 

事前にざっくりあらすじを読んでいて、結構好みの内容だと楽しみにしていた一作。戦国時代末期石見国、仙ノ山と呼ばれる銀山の間歩(坑道)が舞台ということで、「あれ?千早さんが戦国時代の小説?」と、新鮮な驚きがあった。というのも、千早さんの小説と言えば、やはり恋愛小説といったイメージがあったものだから、これはチャレンジなんだろうなぁと。さて、どんな新しい世界が待っているのだろうか。

 

「石見銀山」。聞いたことがあるけど、どこにあるのか、なにがあるのか知らない土地。ここはかつてシルバーラッシュが起きたとのことで、大勢の男たちが命がけで銀を掘っていた場所だそう。(っていうか、世界遺産だそうです。知らなかったなんてお恥ずかしい)

 

主人公の少女・ウメは両親とはぐれてしまい、この山の山師・喜兵衛に拾われる。夜目が利く少女ウメは、常に喜兵衛に付き従い、銀山についての知識を授かるのだが、女性であるが故の理不尽さも同時に味わう。前半はそんな山での生活と、喜兵衛の周りの人々との関係や出来事が淡々と語られていく。

 

この前半が私には結構長い道のりに感じ、登っても登っても先が見えないというか。閉塞感の中で、黙々と文章を追っていたという印象。

 

 

 

そんな進めない時間を助けてくれたのが、なんと千早さんのTwitter。『しろがねの葉』裏話という内容を何日間かに分けて写真とともにツイートされていた。丁度同時進行という形で読書が出来た。これは、かなーり楽しかった。実際千早さんが自ら山に入って歩く様子を、たくさん写真を用いて説明されていた。

 

これによって文章に色が付いたといった感じで、ぐーんと小説との距離が近づいた。それと同時にウメが少女から大人の女性になり、結婚・出産と、話の展開もどんどん進み、後半はあっという間。特に掘り続ける男たちの生きざまは迫力満点。山を削り続けることは、命を削り続けること。それを見守る女たちのやるせなさなど、見どころが多い。

 

また、夫・隼人、ウメを育てた喜兵衛。そして昔から一緒にいた龍。彼らとウメの関係性が徐々にはっきりし、各々の胸の裡が見えて来る。そこには本人にしか解り得ない深いものがあり、生きる苦しみや、死ぬことについてまでも考えさせられる。

 

ということで、千早さんの新しい世界を見せていただいた。読んでいるときはあまり千早さんの気配を感じなかったけど、でもたまに登場する擬音や擬態語に千早さんを感じました(笑)

 

今回ばかりはTwitterに助けられたなぁ。最初は上り坂が長すぎるし、返却日も迫ってるしで読了することを諦めていたけど、写真を拝見して一気にこの世界が身近になったという。最後まで読めて良かったと今は思う。福光の石切場とか、ちょっと見学してみたくなった。と同時に、知らない場所がまだまだたくさんあるものだと痛感して本を閉じたのでした。

 

舞台の石見銀山はどんなところ?

街並みも素敵な雰囲気です!


試し読み(新潮社サイト)

試し読み | 千早茜 『しろがねの葉』 | 新潮社

 

 

 

【つなぐ本】本は本をつれて来る

芝居、マタギ、クマ、山神、遊郭、炭鉱、同性愛、近親愛、親子愛、純愛、ふたなり、出産、殺人、そして、山妣の存在と、ありとあらゆる角度からビュンビュン話が飛んでくる大作!

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