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【書評・感想・あらすじ】嘘つきジェンガ:辻村深月

 

 

嘘つきジェンガ:辻村深月著のレビューです。

☞読書ポイント 

他人が騙された事例を聴くと、「そんなことで自分は騙されない」って思ってしまうことは多々ある。しかしもし、自分が藁(わら)にもすがる思いにかられたら、意外にも簡単に詐欺に引っかかることは誰にでも起こり得る。本作はそんな心の隙間にスッと入り込んだ詐欺の話が3編。他人事とは思わす読もう。

 

書評・あらすじ 小さなこころの迷いの隙間から入り込む「詐欺」

 

(ネタバレなし)

「詐欺」に関する話が3つ。こうして読んでみると、「詐欺」と言っても本当にバリエーションが多く、やはや騙されないで生きていくのが難しい世の中になったものだとつくづく思う。自宅の電話には詐欺電話を防止するアナウンスを流すようにしているけど、それでも堂々とかけてくる強者もいる。もう本当に何をしても隙あらばって感じで嫌になります。

 

本作「嘘つきジェンガ」に登場する詐欺は、「ロマンス詐欺」「お受験詐欺」「あの人のサロン詐欺」と言ったもので、「ああ、そんなところにも」と思うものばかり。所謂、「オレ、オレ」なんて詐欺からかなり進化している...とも言える。

 

 

 

「2020年のロマンス詐欺」では、知らぬ間に犯罪の片棒を担がされていた、なんてパターン。騙す側、騙される側、もうその境界線がぐちゃぐちゃというか。

 

がんばって大学に入れたのにコロナ禍でバイトすらできなくなった大学生が、軽い気持ちではじめてしまった「メールで出来るバイト」がそのひとつ。都会に出てきた学生の孤独という隙間に魔が差す。これも「今」の世の中を実感させられる。

 

「5年目の受験詐欺」は、可愛い息子の受験をなんとか成功させたいと躍起になった結果、受験コンサルタントに相談し、お金を払ってしまった母親の話。息子の実力を信じようとする反面、甘い話に乗ってしまったという。夫にも相談せず一人で突っ走った彼女の思いも解らないわけではないけれど、これも不安という隙間に魔が差した「今」の世の中を反映した話であった。

 

最後の「あの人のサロン詐欺」はちょっと変わった詐欺かなと。主人公は推しの漫画作家になりすましてサロンを開くという、「え?そんなことが可能なのか?」と思うような内容。この話の最後がどうのような形になるのか、展開が読めない内容だったけど、意外にもじんわり来るラストだった。

 

 

 

本書の興味深いところは、騙される側の話だけではなく、騙す側の話も登場する。どの人々も、どこかを少しつついたらグラグラと崩れ落ちてしまいそうな脆さを孕んでいる。そう、その姿はまさに「ジェンガ」のようなのだ。

 

「詐欺」はちょっとした隙間にスッと入って来て、お金だけでなく、精神的な部分も奪ってしまう怖ろしいもの。気を付けても気を付けても止まることなくやって来る。こうして書いている間も誰かが誰かを騙している。

 

ということで、辻村さんの作品を久々に読みました。短編を書くのがホントに上手い作家さんだなぁと思います。どの話も丁度よいあたりで結末へ。その塩梅が絶妙でした。

 

 

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