ヤクザ・チルドレン:石井光太著のレビューです。
☞読書ポイント
「子は親を選べない」とは、こういうことを言う
これまでも石井光太氏のノンフィクションは結構な覚悟を持って読んできた。今回もそれなりの心構えをしていたものの、数時間でそんな気持ちも消されてしまった。もう何がどうしてこうなるのか、冷静に考えることが不能になってしまう世界を覗いてしまったこと、良かったのか、悪かったのか。
レビューを書くにあたって、本書を読んで感じたことをざっくり思い浮かべてみた。
・とにかくドラッグは人を狂わす恐ろしいもの。
・恋愛→ドラッグ→妊娠→結婚→離婚という流れから、やがてドラッグ中毒で育児放棄というパターンが多い。子供より男に走る母親はこのパターンを何度も繰り返す。
・子がドラッグに手を出すきっかけとなるのが、親からというケースも。
・虐待を受けている子供に気づいていても、暴力団の子供だったら見て見ぬふり。通報を躊躇する周りの人々。
・いわゆる暴走族や非行に走る子供はどうしてそうなったのか?親、そして、祖父母の代まで遡ると、その子供の「今」には責められない流れがある。
・居場所を失った子供は、どんな生活を送ることになるのか。出会った人によって人生が大きく変わることもある。それは天国と地獄ほどの差がある。
以上が本書を読んで印象的だった部分だ。様々なケースがあったけど、中には同じ話?ってくらい、母親たちの行動に類似したものが見受けられた。そして必死に読んでいたので見落としたのだけど、その子どもたちの年齢があまりにも幼いことに驚愕する。
幼い子どもの周りにいつもドラッグがあるという環境。そしてそれを使用して狂っていく親たちの姿。何度も変わる父親。中には女の子に体を使った仕事をさせる親もいる。もう本当に言葉を失うほど酷い話ばかりで、心のモヤモヤが晴れることはない。
そんな環境で育った子供たち。なんとか生きて大人になった子供たち。強い気持ちで親から離れる者、それでもつながりを持つ者、親を尊敬している者、どの話も一筋縄ではいかない親子関係がそこにあった。「子は親を選べない」という言葉があるけれど、本書を読むと本当にそうなんだと改めて感じる。
ということで、やはり、やはり、自分の想像を軽く飛び越えていったノンフィクションであった。「まさか?」「なんで?」「こんなことって....」を、ただただ繰り返す脳内。「何かもっと子供たちを保護するいい策はないものか?」と思うものの、オロオロするしかない自分がいる。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
暴力夫から子供と一緒に逃げ出そうとしなかった母親。
そんな家庭で育った子どもたちに救いの道はあるのか?