87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし:多良美智子著のレビューです。
☞読書ポイント
87歳、健康であればここまで可能....ということは解った。
新聞広告で大々的に宣伝されていたのを見て母が読みたいと。図書館の予約数の多さから購入することになった。大人気です。
多良さんについては事前にYouTubeで拝見していて、お部屋の雰囲気なんかも知っている。その印象は「ちゃんとしているなぁ」というものだった。よく言う「丁寧な生活」がぴったりです。
本書を読んでその印象がさらに深まった。とにかく「きちんと」されているのです。住み慣れた団地の部屋は決して広くはないけれど、家族とともに歩んできた歴史を感じさせられる空気と、大切に使われてきた物が、居心地よさそうに配置されている。食器ひとつ、調理器具ひとつ、装飾品なども、多良さんが気に入っているもののみ、選び抜かれた感じが伝わって来る。
築55年の団地で一人暮らしを謳歌している多良さんは87歳。現在お孫さんの手を借りて85歳でYouTubeデビュー。6万人以上のフォロワーがいるという。80でピアスを開け、イギリス旅行のツアーに一人で参加したり、その行動力も高齢者とは思えないほどアクティブ。
電子機器も積極的に取り入れている生活で、息子さんたちとリモート夕飯なども。お料理も無駄が出ないように調理されたり、ラジオ体操にウォーキング、コーラス、裁縫や園芸、読書も1か月に6-7冊は読むというのだから驚きです。
...とまぁ、イメージする高齢者とは全く違って、とにかくこれだけやることがあれば、暇している時間はない。
そして人付き合いもとても淡泊とでも言おうか。それは家族であっても、友人であってもつかず離れずの一定の距離を取るようにしているそう。深入りはせず、その時々を愉しめればよいと。
こうして書いているだけでもなにか「完璧」「優等生」な感じがする。自分はここを目指すべきか?等々考える。でも、こういう生活ができるのも「健康体」であることが大前提であること。団地の階段を毎日何往復もできる体力がないと成り立たない。
多良さんより少し年下の母、いつもは本の感想をよく話す人なんだけど、今回は読み終わったら本をテーブルの端に追いやっていた。「ああ、好みでなかったな」と察しつつ、感想を敢えて聞いてみたら「きっちりしていて無駄がないね、もう少し余裕がある人の話の方が、読んでいて楽しいのだけどね」と。
母の言わんとしていること、娘のわたしには理解できる。そつなく何でもこなし、きちんと片付いたお部屋。まぁ、たとえ撮影用だとしてもなにもかもが整っている。現在、体が弱って薬が手放せないでいる母にとって、アクティブに動ける多良さんのような生活はしたくても出来ないもどかしさもあったのだろう。
ということで、我が家では結構複雑な気分で読了。こういう生活を目指すなら男女問わず、一人で生活できるよう自立しておかなければね。そして、足腰を鍛えて、病気に罹らないように。スーパーお婆さんになるには、まずは下準備から。ハードルは高いぞと。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
年を取ることで出来ないことは増えるけど、現状を受け入れる強さとユーモアを忘れずに生きられたらいいなぁと思わされた素敵な一冊。




