風神雷神Juppiter, Aeolus(下) :原田マハ著のレビューです。
☞読書ポイント
宗達とカラバッジョの運命的な出会いに胸が高鳴る
まずは、上巻のおさらいから。
上巻を読んだのが2020年8月。あっという間に時が過ぎ、ようやく下巻を入手。気にはなっていたものの他の本が忙しくてもう下巻はいいっかって思ったけど、やっぱり下巻の動きを知りたくなました。内容がすでにおぼろげ。青年たちが海外へ向かうという希望に満ち溢れたラストだったくらいしか覚えておらず。自分の書評を読み直し、いざ下巻へ!
上巻は国内での話でしたが、下巻はすべて海外での話に変わります。天正遣欧使節の一員としてローマへ派遣された俵屋宗達と原マルティノたちの長い航海が始まります。
ローマで洛中洛外図屏風屏風を教皇猊下グレゴリウス13世に謁見し、献上するという大きな役目を果たすため、インドやオランダなどに立ち寄りながら旅を進めます。しかし航海にはアクシデントはつきもの。様々な危険に晒されます。それでも青年たちは初めて経験することばかりの長旅に挑んでいます。片道だけでなんと3年も。
なかでもイタリアの旅が青年たちにもたらしたものは大きく、様々な絵画との出会いのシーンは、実際その場にいないわたしでも鳥肌が立つような感動が伝わってきました。
まだ絵師として経験も少ない宗達ではあったけど、やはり審美眼はしっかり持っている。「すごいなぁ、一目見てその良し悪しが見分けられるなんて...」って思っていたら、宗達と同じようなイタリアの青年が現れる。
彼はのちのミケランジェロ・メリージ・デル・カラヴァッジョだ。ここで意気投合した宗達とカラバッジョの友情は、運命的な出会いといっても過言ではない。彼らの人生において小さな小さな点に過ぎない1日だったけれども、こういう出会いもあるんだなぁと。この出会いの場面がいつまでも心に残る。
とは言え、そもそもこの話は史実に基づいたものでもなく、あくまでもマハさんが作り上げた話なんです。残された彼らの作品から物語を作るということ、こちらもまさに神業だなぁと感じます。
「風神雷神」は所謂アート小説ではありますが、友情、旅、情熱がめくるめく形で私たちに迫ってきます。長旅を共にしたような読み心地。下巻は最初はちょっとどうかな?って感じで上巻のほうがおもしろいって感じていましたが、いやいや、後半はどんどん彼らに惹き込まれていきました。
あ、「レオナルド・ダ・ビンチ」の名前の意味とかの小ネタも勉強になりました!
【つなぐ本】本は本をつれて来る
マハさんのアート作品の中でも、この作品は上位にあげたいほど良い作品です。こちらは史実に基づいた話です。