うまれることば、しぬことば:酒井順子著のレビューです。
☞読書ポイント
日々変化することばの世界。生存競争が激しいことばたちの実態とは!?
いわゆる流行語とか、若者言葉とか、言葉は「生もの」であることは重々承知している。目まぐるしく変化する若者言葉を追うことはとっくに止めましたが、たまに「死語」と呼ばれる単語なんかを使ってニヤニヤしている。
例えば今は「ベビーカー」とか「バギー」という言葉が使われていますが、自分は「乳母車」という言葉を使ったりする。なんでか分からないけどとっさに出て来るのは「乳母車」なんですよねぇ。さま~ずの三村さんもトークでいつも「乳母車」って言ってて大竹さんに注意されてるけど、「三村さんもどうしても言ってしまうんだろうなー」って勝手に同類だと感じ、ニヤニヤしてしまう。自分たちの時代は「ベビーカー」と言うより「乳母車」って雰囲気のものだったから、いつまで経っても「乳母車」って言ってしまうのかもなぁ。
ということで、本書はそんな言葉の数々を、酒井さんがどんどん挙げていく。とにかく酒井さんの言葉に対する観察はすごい。何かに気を留めて生活するっていうのはこういうことなんだと気付かされる。酒井さんにとって「言葉」はまさに日々観察するものの対象で、それゆえに、新しい言葉と古い言葉の「諸行無常」「栄枯盛衰」みたいなものをしっかり感じていらっしゃるのだろう。
最近よく耳にするフレーズ、「『気づき』をもらいました」。では、「気づきました」とどう違うのか?とか、「生きづらさ」なんて言葉もよく使われてますよね。また、コロナになっていろんな言葉が生まれましたし、この数年で医学用語も随分使いこなしているように感じます。
最近になって使われるようになった言葉の中には、なんかしっくりこない、聞くたび、使うたびにモヤっとする。そんな違和感やモヤモヤをが、様々な例話と解説によって明確になっていく。それは時代背景や、日本人特有の気質によるものだったりと様々な要因があるのですが、そのあたりを見事に整理してくれています。
今はまだ男女で使う言葉が違ったりもするけれど、酒井さんがおっしゃるように、いずれは男女、言葉の区別がなくなる世の中になるかもしれません。以下、男女の会話。
「腹減った」
「メシどうする?」
「オレ飯炊こうか?」
「じゃオレ味噌汁作る」
文字だとどっちが何を言っているのか判別がつきづらく、例えば小説の世界の会話なんかは、読み解くのに時間がかかりそうです。
ということで、本書を読んでいるとなんとなく自分も言葉に敏感になって来る。そして、自分が何故この言葉を使いたくないのか?など、じっくり考えてみたくなる、そんなきっかけになる一冊でもありました。
【つなぐ本】本は本をつれて来る
「ことば」はどんなきっかけで生まれたのだろうか?そんな語源を目で見てみると、さらに納得ができる。ことばの成り立ちを楽しい写真とともに学べます。