万事快調:波木銅著のレビューです。
☞読書ポイント
万事快調って思っているのはあなたたちだけ?
なーんか厄介な小説と関わっちまったな!って、途中で何度も思ったものだ。そして、もうこの辺で脱落しようかなと、何度も思ったものだ。それでも、来る日も来る日も、少しずつ読み続けたのは、たくさんの人たちの「面白かった」という感想を目にしていたからだ。
ちなみにAmazonには錚々たる作家さんたちのコメントが。
・おもしろかった。「万事休す」の状況なのに、この愉快さ。作者には天性の資質が感じられた。この賞が人生を狂わせないことを切に願う。--中島京子
・頭ひとつ抜きん出ていた。登場人物たちの過剰な自意識に何度も笑わせてもらった。皮肉とユーモアのセンスがずば抜けていて、これは努力では身につかないものだ。--東山彰良
・正直、粗の多い作品だとは思う。巧いとは一度も感じなかった。が、際立って面白かったのは事実。--森絵都
・読みながら、そのセンスの良さに何度も唸り、選考委員としてこの作家のデビューに立ち会いたいと思った。--辻村深月
・先を見通しているのか、後ろが見えていないのか。
でも、少なくとも作者には今がはっきり見えている。何者なのか見極めたい。--京極夏彦
そう、本書は満場一致で第28回松本清張賞を受賞した作品なのだ。だから、きっと最後にすごいことが....なんて期待があり、降りるに降りられない状況だったのです。
結果、ちょっと放心状態です。確かにこれはぶっ飛んでいる作品だ。いや、ラストだけではなく、中盤からすでにアブナイ雰囲気は満載だったわけで。だってね、園芸同好会という名目で、女子高生3人が大麻を育ててしまうんだから。場所は学校の屋上!酷い設定ったらありゃしない。もう悪い予感しかしない。
どうしてこうなったかは、いろいろぐちゃぐちゃ前段階が長いのだが(この部分がしんどい)、彼女たちはとにかくお金を儲けて閉塞感ある場所から早く抜け出したいという、根本的にはよくある若者の話ではある。
屋上で育てたものが「野菜」とかなら、話は全く別の方向へ向かったと思われるが、これが大麻となると行く先は暗い。なのに彼女たちはまるで「野菜」を育てるのと同じ感覚で大麻を育てることを企てた。この辺からしてもうめちゃくちゃなんですけどね。
とにかく浅はかな考えでどんどん話は進んでいくのだけれども、たまに会話の中で、結構真面目な文学、映画、音楽の話などが差し込まれる。そのアンバランスな感じも個性的。
そして、お待ちかねの場面へと突入していく。やはや、圧巻!これは映像化しても良いかもと思わされるくらい、なんだかそのシーンがはっきりと見えて来る感じがした。スローモーション的なものも(笑)
驚いたことに筆者はまだ21歳の現役大学生だという。なるほど、確かに会話のテンポが若者っぽいし、何といっても軽快だ。まぁとにかく大変なものを読んじゃったという感覚が残る。波木銅さんが、今後どんな作品を手掛けていくのか、このまま突っ走るのか、はたまた全然違う雰囲気の作品を書くのか。次作がちょっと気になります。




