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うずまきぐ~るぐる 

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【レビュー】平場の月:朝倉かすみ

 

 平場の月:朝倉かすみ著のレビューです。

平場の月

平場の月

 

 

行く先の切符を与えられてから乗る列車.....そんな恋愛小説のキツさが身に沁みる

 

いろんな恋愛小説があるけれども、これはかなりキツイパターンの小説でした。と言うのも、かなり早い段階で二人の行く末を読者は知ってしまうから。敢えて作者はそうしたのでしょう。どうなるか知らずに読むより、むしろこちらの方がとても残酷と言えます。

 

いわゆる不倫小説みたいに「いずれ別れるんだろうな」っていう、ありがちな別れへの階段を昇って行くものとは違う。本書の別れは「永遠の別れ」、つまり「死別」なのです。この結末を知ってて読むという作業は本当につらかった。

 

しかも主人公の男女二人は50代。同じ恋愛でも若者のそれとは違い、どこまでも淡々とした雰囲気。自分のことを知り尽くしている上での恋愛は、相手へ向ける目も冷静であったり、遠慮があったりで、まさに大人の恋愛なんだけど、そこに大きな壁、つまりここでは「病気」というものが二人の間に入り込んでくる。

 

 

 

青砥と須藤。ふたりは中学の同級生。50歳で再会して恋に落ちる。とはいえ、男と女というより、友情や同志のような雰囲気で、恋する甘いムードといったものはない。

 

純粋に一緒に居ることを望む青砥は、結婚という道を意識し始める。それとは対照的に死を感じながら生きてる須藤。この二人の何とも言えない気持ちのズレ=切なさとなって、キリキリと胸が痛む後半。どちらも相手のことを大切に思っているからならではの行動であったり言葉であるんだけど、これが本当に読んでいて辛いところ。

 

昔から「太い」という印象があったという青砥。これは見た目じゃなくなんとなく須藤が醸し出す雰囲気がってことなのですが、須藤は確かに「太い」。そして「強い」なぁと感じます。そんな彼女が見せたVサインの指の描写が、わたしのなかでずっと尾を引いてる。

 

「自転車の二人乗りって、何歳くらいまでオッケーなんだろうね」

「チャーミーグリーン幻想か。ただし小ぎれいな老人にかぎる、だね」

「だな」

 

無邪気に交わされていた青砥と須藤の会話。同世代ならクスリと笑える会話。ずっと聞いていたかったな。これらのシーンを頭の中で巡らせ、悲しみがより一層深くなった。

切ない。ただただ、ひたすら切ない。