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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】国語辞典を食べ歩く:サンキュータツオ

 

 

国語辞典を食べ歩く:サンユータツオ著のレビューです。

国語辞典を食べ歩く

国語辞典を食べ歩く

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(本が好き!の献本書評です。)

突っ込みどころがたくさん見つかる引き比べの深い沼

 

その昔、国語辞典はあくまでその意味や用法、語源を説明するもので、誰かの感情や感想などは書かれていないものだと思っていた。しかし、職場の辞書にザワつくわたし。ある食べ物説明の最後に「美味」という文字が!「美味?.....って、あなた!」。ひとしきり説明したあとに念押しするかのごとく「美味」と。これまで大人しくしていた辞書からただならぬ主張めいた言葉にギョッとし、横に居た同僚に声をかけたら、「新明解はそこが楽しいんですよね。」とニヤニヤしながら次々と面白いページを教えてくれた。

わたしはずっと三省堂を使っていたので気づかなかったけど、他の国語辞典がこんなにも面白いことになっていたとは!小学生から使い続けていたマイ国語辞典がものすごく時代遅れに見えて来て焦った...という思い出があります。

 

そんな辞書にまつわる思い出がよみがえったのがこの本。「美味」の件はしっかり本書にも記載されていました。こんなことはどうやら辞書の世界では日常茶飯事で、各社、辞書に関する小さな突っ込みどころがたくさんあるようだ。  

 

 

 

さて、本好きな我々。同じ本の読み比べとなれば1度くらいはしたことがあるだろう。しかし、辞書の引き比べなど進んでやる人はやっぱり珍しい気がします。この沼にはまってしまうとこうなるのか....といった見本がサンキュータツオさん。彼は以下の辞書たちと会話するかのごとく辞書との対話を楽しんでいる。

 

登場する主な辞書は4社

・岩波国語辞典

・三省堂国語辞典

・新明解国語辞典

・新鏡国語辞典  

 

さらに深みにはまると「広辞苑」「大辞林」「大辞泉」「日本国語大辞典」が登場する。 いくつか引き比べをしていくと、それぞれの「性格」みたいなものが出てくる。さらに読み進めると、編集者自身のそのものに対する気持ちや好みが見え隠れ。「やけに語るなぁー」と完璧に説明されているものから、逆に「え?それだけ?」とあっさり説明に留まっているものまで、その熱量の違いが如実に表れていて面白い。そこをすかさずサンキュータツオ氏が面白おかしく突っ込んで来る。

 

 なかでも面白かったのは「おでん」。各辞典、どの具が掲載されているのか検証。小型国語辞典、学習国語辞典、中型国語辞典、16冊を引き比べている。気になります。

 さて第1位は~~?

 

 

 

16票を集めました。....じゃじゃーん♪「こんにゃく」です。  

 

地味に驚きました。こんにゃくはおでんの顔なんですかね。で、で、大好物である「たまご」は、どこにも入ってないという!!これにはサンキュータツオ氏も「大問題だ!」と。しかし、2019年の岩波国語辞典(第八版)に無事エントリーされたとの報告が。でもですね、「たまご」ではなく、「ゆで卵」として載っているらしい。なぜに???おでんを注文するとき「ゆで卵お願いします」って言わないじゃん!....おでんの具は闇深い。

 

余談だが、ちくわぶラブな者にとって、おでんにちくわぶは欠かせないものだが、やはり載っていませんでした。「ちくわ」はあるのにね(泣)もし、ちくわぶが載っている辞書があったら味覚が合うということで「御贔屓辞書」にしたかったのにな。もうこうなったら自分が辞書を作って載せるしかないか!(キッ)

 

そのほかにも「やかん」とか「ざる」とか食具に関しての引き比べなどもあり、こちらも雑学を含め興味深い内容が盛り込まれています。 笑えるものから、へぇーー的なものまで、なかなか楽しい内容でした。本書を読む限りでは、食に関して熱心(食いしん坊)なのは「新鏡国語辞典」かな。

 

最近はめっきりPC頼み。わからない言葉はすぐ調べられ、一つ調べたらそこで終わりだけど、紙の辞書はペラペラめくっていると必ず発見がある。そんな辞書との付き合い方を再確認させられた一冊でもありました。わたしのお気に入りは小学館の「類語例解辞典」。久しぶりはまってみるか。