NHKの「ひるまえほっと」内で、女優・作家である中江有里さんが紹介した本を掲載。番組内で話されていた内容を、ざっくりですが文字に起こし、お伝えします。
番組コーナー紹介文
月に一度のブックレビューです。案内人は女優で作家の中江有里さん。年間300冊の本を読む中江さんが、幅広いジャンルからご紹介。あなたも夢中になれる1冊に出会えますよ!
今回のテーマは、世界を見るです。
ルワンダでタイ料理屋をひらく:唐渡千紗
中江さん:
シングルマザーの著者がルワンダに移住し、タイ料理屋を開いた経緯を描いたノンフィクションです。これまで飲食店をやった経験もない。息子の子守をしてくれる人を探すことから始まる。やっと開業するも、従業員にもお客にも日本の常識が通用しないという苦労続き。毎日珍事が起きる。しかし日本では得られない働く充実感に満たされていく。
私は唐渡さんが移住したのは野心に満ちたものというよりも、現状を打破するためって感じました。迷ったり、現状を少し変えたい方へのヒントになるかもしれません。
Arc アーク :ベスト・オブ・ケン・リュウ:ケン リュウ
中江さん:
ケンリュウの魅力を詰め込んだ短編集。ケンリュウさんの作品はどこか抒情的で親子の情愛とか、古代中国を題材にした物語。SFになじみのない方にも読みやすい作品が多い。表題作の「アーク」は映画化されて話題にもなっている一作。最新技術によって不老不死となった初の人類である「わたし」の物語。今後も注目される作家の短編集です。
岸恵子自伝:岸恵子
中江さん:
現在88歳。活躍が一つの枠にはまらない非常にワールドワイドな方。印象的なエピソードは12歳のころに空襲にあって、大人に「防空壕に入れ」と言われたんだけれども、岸さんは従わずに逃げ助かったという経緯があります。もう大人の言うことは聞かないと決めた。その後、24歳、単身でパリに渡り、自身の思う道を歩み続ける。副題になっている「卵を割らなければ、オムレツは食べられない」は、フランスのことわざで「冒険なしに結果を得ることはできない」という意味。これは岸さんの人生を見事に表していると思いました。
最終飛行:佐藤賢一
中江さん:
誰も知らないサン=テグジュペリを描いてる。第二次世界大戦というものを、日本の視点から見ることは多いのですけど、フランス人であるサン=テグジュペリから見た場合、違った角度で見ることができる。サン=テグジュペリの心の風景、世界情勢、様々なことに触れられる。
この本を読んでいるとサン=テグジュペリって本当にフランスを愛した方だなと感じます。政治抗争で巻き込まれていく、作家として利用される部分もあるんですけれども、彼はフランス全体のことを考えていたんだと思います。その姿勢が一方では優柔不断に思われ、それが原因で居場所を失いアメリカに亡命していく。でも、その結果「星の王子さま」という名作が生まれてくるんですよね。運命とは不思議なものだなと思います。
また、優柔不断さっていうのがね、女性に対してもそういうところがある。妻を非常に大事にしてるんですけど、他の女性にも安らぎを覚えて、そっちも大事にしちゃって、そこでいろいろ起こるわけですけどね。
あと、もうひとつ飛行士という仕事。サン=テグジュペリは40歳を過ぎてからも軍の飛行機に乗っていたんです。年齢制限はとっくに過ぎていたんですけど、やはりフランスのために働きたいっていう思いがそうさせていた。一方、事故も起こしていたりもする。ちょっと詰めが甘い部分があるんですけども、総じて憎めない。人間性みたいなものを感じました。
yuri’spoint
星の王子さまと同じ運命?
躁鬱大学:坂口恭平
中江さん:
自分のために書いているというのが非常に説得力がある。自分がつらさを知っているからこそ、相手のこともわかるんだと思うんですよね。私自身は躁鬱はないんですけれども、それでも共感ポイントがたくさんありました。気分の浮き沈みはどなたにでもあると思います。
(ここで内容を一部抜粋、紹介)
yuri’spoint
「人は人からどう見られているかだけを悩んでいる」
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<感想>
今回の選書は「こういう時だからこそ、世界に目を向けてほしいな」ってことだそうです。今日はお話を聞いているだけで、いろんな国名が飛び交っていて、それだけでも少し気持ちが広がっていく感じがしました。「躁鬱大学」は新潮社の中瀬さんも何度か紹介されていましたけど、みなさん、気持ちが楽になるっておっしゃっていますね。気持ちが鬱々したときに読んでみたいと思いました。
それではまた来月!
【過去のブックレビュー】