あの頃ボクらは若かった:わたせせいぞう著のレビューです。
元気だったなぁ、あの頃の日本......
「わたせいぞう」、「ハートカクテル」に反応した世代の方は必読です(笑)わたしはこれらを目にするとさらに「松岡直也」の音楽が脳内再生されます。本当に懐かしいです。楽しいです。
こういう言い方は年寄りっぽくなるのでなんですが、「あの時代は良かったなぁー、楽しかったなぁ」と言いたくなってしまった。コロナ禍で読んだせいか、あの頃の明るさはなにか別世界に感じてしまう。
とにかく元気があったころの日本。わたせさんのほんわかしたイラストではあるけれど、人々から漲るエネルギー、熱気、あらゆるところから活力が溢れ出ている。ちょっとギラギラきした感じなんだけど、この感じ、今はもうないなぁ、再びこんな時間がやって来ることはないんだろうなぁ...としみじみしてしまった。
わたせさんは1945年生まれなので、わたしよりだいぶ年上ですが、昭和生まれなので、色々と自分が見たり経験した部分と重なる。
銀座のマクドナルド1号店は、胸を躍らせた記憶がある。六本木の「キャンティ」は行ったことはないけど、大人たちが集う憧れのレストラン。青山の「VAN」は、学校の先生がIVYルックをカッコよく着ていたなぁと懐かしく思い出す。どのページを開いても思い出が掘り起こされます。
町並みを振り返るだけでなく、当時の生活様式を振り返るのもまた楽しいです。新幹線に食堂車があったこととか、歩行者天国で踊る若者とか、駅では切符切りの「カチカチ。カチカチ。」の音があったり。イラストを通して自分が知っている風景を再現しながら読んでいました。
「ダイヤより真珠の似合う女(ひと)と結婚しなさい」
これは「銀座の母娘連れ」というタイトルのページにあった言葉。わたせさんのお母様の持論だそうです。銀座の三愛ビルの喫茶店から4丁目の交差点を行き交う人々を見ているお話。小粒の真珠のイヤリングをしたお嬢さんが母親と歩いているイラストがとても眩しいページです。
イラストはとても細かく再現されていると思います。見ているうちに自分もその中に入り込んでいるような感じがします。わたしもわたせさんと一緒、当時の職場が銀座だったので、活気のある銀座がどれだけキラキラしていた場所だったかということ知っています。今でも銀座は綺麗だけど、やはりあの頃の空気感は今はない。
ということで、夢や希望がたくさんあったなあ。本を閉じるとなんだが「現実」に戻ってきちゃったな。まぁ、楽しい時間もずっとは続かない。でも、こういう時代に生きられたことはとても幸せなことだったのかなと、振り返ってみてはじめて気づけた。
さて、松岡直也を久しぶり聴こうかな~♪