ニュータウンは黄昏れて:垣谷美雨著のレビューです。
夢のマイホームも年を取り....
バブルの時にどんどん建ったマンション物件等々、そろそろ築30年くらいになるのかな。老朽化した建物、そして、家だけでなく人の高齢化も進み、様々な問題が起きて来る時期に突入です。
本書はそんなバブル期に分譲団地を購入した家族を軸に、その周りで起きる出来事をリアルに描いた作品。
「ニュータウン」と名の付く場所は東京にもあるけれど、その実態はどうなのかな。高齢化ということはよく聞くが、空き部屋も増えているのかな?若い人の中にはこういった物件が好きな人も多いと聞くし、お洒落にリノベーションして暮らしているなんて風景も雑誌でよく見かけますが、実際は寂れていたりするのでしょうか?
今回の大きなテーマは、団地の老朽化に伴い建て替えるか、このままま修繕して住み続けるかという問題。住民たちがどう答えを出していくのか、その過程を見ていく。当然意見の食い違いで、もめにもめるわけだが。
団地の話と並行して団地で育った娘たちの話が登場する。彼女たちは結婚が現実的に近づいてきているお年頃。3人の幼なじみの女性たちは、ある資産家の息子と付き合うことになり、それがまたとんでもない事態に陥ることになるのだが....。
結構目が離せない話が盛りだくさんに詰め込まれている作品。特に団地の理事会から見えて来る人それぞれの立場や、家に対する考え方の違いが印象的。何を決めるにも個々の価値観をすり合わせ、まとめて行くことは本当に難しい作業であることが解かる。
ざっくりではあるけれど、色々勉強になることも多かった。お恥ずかしいことに、わたくし、団地はずっと賃貸だと思っていました。購入できるんですね。
団地は空間がたっぷり取られていて、緑も多く、住みやすそうですが、交通の便がちょっと.....って所も多い。一長一短ですよね。これからの団地はどうなって行くのかな?
ラストはなんとなくきれいに収まってますが、娘たち3人の話、個人的には結構気持ちの悪い話だったように思える。資産家の息子の行動も、彼女たちの行動も、「えぇぇーーー」となる驚きの連続だったけど、何故だか最後は何事もなかったかのように収束。いやぁーそれはないでしょって、言いたくなちゃったわ。
夢のマイホームも時間と共にまるで魔法が解けてしまったかのような淋しさをちょっと感じてしまった。あぁそうか、だからタイトルに「黄昏れて」って(笑)まんまとわたしも黄昏れてしまったという感想でおしまいです。