さよなら、男社会:尹雄大著のレビューです。
(本が好き!の献本書評です)
男社会もまた一括りに出来ない複雑さがあることが浮き彫りに。
最初は頷きながら読んでいたのだけれども、ページが進むにつれ頭の中がゴチャゴチャしてきて、自分のなかで消化しきれないものが積もっていった。それだけ「男性性」というテーマもまた根深い複雑さがあり、結論とか、納得する答えを求めることは難しいものだなぁと改めて感じました。
でも、その複雑さこそを私たちは知る必要があり、学ぶことも大事であるということを本書は教えてくれている。
尹さんの話は女性にはなかなか理解し難いことだったり、ちょっと面倒だなって思うことや、そこまで突き詰める?ということが山ほどあった。それらの尹さんの体験を一つ一つ読んで行く作業は、正直とてもしんどいものがある。
男性は男性であることで苦しい部分が当然たくさんある。そういった男社会のメカニズムとでも言おうか、どんなことが根底にあるのか探る尹さんの考察は、「なるほど」と思うものもある。
尹さんひとりとっても「男性性」や「男社会」に対してこれだけの考えや感じ方がある。そこに家庭環境や時代背景や経験が加わって来るんだから、これを読んで「自分は違う」という男性もきっと大勢いるはず。
このように一般論では括れない複雑さがあることを理解し、私たちはより一層、知ることを怠らない努力が必要だと感じます。そのためにも個々の話に耳を傾けることも大切だなぁと思いました。あたかも解ったようになんでも一般論で括ってしまいがちだけど、果たしてそれは本当にそうなの?と立ち止まる機会を本書からもらいました。
それにしてもひと昔前、1970年から80年代に比べたら、だいぶ日本も変わったなぁと感じる話も多い。「女の腐ったみたいな奴」とか「女々しい」とか、教育の場でも使っている教師が居たと言うのだから驚きだ。加えて体罰も。「うちの子が悪かったら遠慮なく殴って下さい」なんてことをテレビで平気で放送していた時代。こういう誰にとっても得にならない嫌な言葉があったのだなぁと。(いや、まだ使っている人もいるかもだけど。)
ということで、感想をまとめることがとても難しいが、男性目線での男社会や男性性について赤裸々に語られている本は珍しいかも?と。男性は自身の武勇伝を語るのは好きだけど、自身の弱みなんかを赤裸々に語る場面は少なそう。(※あくまでも私的な感想です)男性の自殺率が女性より高いのも、こうした吐き出す機会がこれまで少なかったからかもなぁと、話が大きく飛躍しちゃいましたが、そんなことも感じました。尹さんのような本が、これからもっといろいろな人によって書かれるといいですね。
これまで男性が男性自身のことを書いた本を読むという事が圧倒的に少なかったわたしにとって本書はとても新鮮でした。
「男社会」という言葉になにか感ずるものがある方は、是非手に取ってみてください。読み終えると少しだけ「男社会」のなんらかが見えて来るはずです。