沙高樓綺譚: 浅田次郎著のレビューです。
秘密のサロンにそそられて
何年かに1冊を読んでいる浅田さんの作品。いつも読んでは「合わないなぁ」といった感想になってしまうのです。いや、本当、人気作家さんをつかまえて何を言い出すのかって感じですが、本との相性って言うのが確実にあって、数冊読んで好きになる作家もいれば、何冊読んでもどうもしっくりこないという作家がいるのも確か。浅田さんの作品は残念なことに後者。
設定も文章も嫌いじゃないです。けれども、読後に残るものがなーんかしっくりこない。偶然ではなく、ずっとこの調子。今回も設定に惹かれて今度こそ!って気持ちで読んだのですが、結果いつもと同じ読後感。うーむ。何がだダメなんだろう。
設定はこうだ。
不動産王、日本文化継承の名家、世界的映像監督——功名をとげた者だけが集まる秘密サロン「沙高樓」で語られるのは、驚愕の体験談。
オーナーは女装している男性なんです。私的には美輪明宏さんをイメージ。このサロンに、集まって来る人々も個性的。誰にも話せない胸に秘めている話がここで語られる。語る者は誇張や飾りをせずに、聞く者は夢にも他言してはいけない。こんな掟があるサロンなのです。
日本刀の真贋をめぐる話や映画のエキストラの不思議な話など、色々な角度から珍しい話が語られる。個人的にはやくざの世界と、そのやくざとお嬢様とのピュアな恋心の場面が印象に残る。
こうして感想を書いていると、決してつまらなかったわけではないという事が感じられるし、途中で読むのを止めようとも思わなかった。
もしかしたら、ちょっとした苦手意識をずっと引きずったままま読み始めるのがいけないのかも?など考えてしまう。また面白そうな作品が出されたら、たぶん、きっと読むんだろうなぁ(笑)浅田次郎氏の作品との付き合いはずっとこんな感じで続くのかもしれない。まぁ、それもいいかもって思えたり...。