綴る女: 林真理子著のレビューです。
宮尾登美子ファンとしてはちょっと複雑な気持ち.....
「綴る女」は、昭和・平成を代表する国民的作家・宮尾登美子さんの生涯を描いたもの。林さんが宮尾さんのことをいつか書くということは、宮尾さんが生前の時からの約束。....ということは知っていたのですが、意外にも早く訪れてしまった。とは言え、宮尾さんが亡くなったのは2014年ですから、もう6年の月日が流れている。
宮尾登美子さんの小説は、私も林さん同様、夢中になって読んだものだ。好きな作品を上げろと言われたら「全部」と言ってしまいたいくらいどの作品も素晴らしく、その読み応えは格別であった。
そして、たまにメディアで見かける宮尾さんのお着物姿。いつ見ても凛とされていて、華奢だけれどもとても存在感のある女性で、格好良いなぁと思っていた。
小説ばかりで宮尾さんの私生活はあまり知る機会がなかったが、宮尾さんが最後に書かれたエッセイ「生きてゆく力」で、改めて宮尾さんご自身のことが覗けた。
正直、宮尾さんご本人が綴ったもので止めておけばよかったかなって思っています。
宮尾さんが誰にも知らせず余生は高知で生活されていたなど、情報として知れたことは大きかったけれども、文壇における宮尾さんの人間関係や、宮尾さんご自身の発言などは、知らないままの方がファンとしては良かったかなーと思います。
と、サラッと書いていますが、実のところ、自分の持っていた「宮尾登美子像」が、この一冊で崩れてしまったのですわ。
宮尾さんに関してそれほど思い入れがなければ、おそらく物凄く面白い内容だとは思うのですが、私としては、自分のイメージの方を大事にしておきたいと思ってしまったのです。
余談ですが母も宮尾さんのファンでこの本を読んだのですが、「ちょっと宮尾さんのこと雑に扱いすぎ。愛情も何もない。心に残るのものが一編でもあれば良かったのだけど、それもなかった。」と、とても残念そうでした。
まぁ、こういうこともあるでしょう。
こうして改めて見ると、宮尾さんの残した作品は素晴らしいものばかり。小説家としてのスタートが決して早くなかった宮尾さん。もう少し早く作家デビューしていれば、もっとたくさんの作品を残せたのに。そして、まだまだ書きたいものがあるっておっしゃっていたのが忘れられません。ということで、自分の思いが強く出てしまったレビューになってしまいました。
最後に、林さん、寂聴さんのところにも足を運んで取材されています。せっかく京都まで出向いた林さんに言った寂聴さんの一言が可笑しくて、思わずクスクス笑ってしまいました。寂聴さんならではの大胆な発言でした(笑)