女帝小池百合子: 石井妙子著のレビューです。
☞読書ポイント
本書は受賞作品
第52回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞作。
感想:話題の一冊。どう感じるかはあなた次第。
選挙前の暴露本かな?と思ったのですが、著者は石井妙子氏。「おそめ」をはじめノンフィクション書籍を数冊読みましたが、随分といろんな世界を見せてもらいました。石井氏がワイドショー的なノリで出版される方ではないと思っているのですが、なにせこのタイミングで発売。いろいろ言われてしまうのも覚悟の上だったのでしょうか。
Twitterでもこの本について書かれた書評がいろいろ話題になっていた。個人的には誰がどう評価しようと、まずは自分が読んでみてどう感じるかが一番だと思っていたので、惑わされる前に読んでみました。できるだけニュートラルな気持ちで読もうと。
で、早速ですがもうほんとね、小池さんってスゴイ人なんだわ。とにかく自分にスポットライトが当たるためなら、人との付き合いもどんどん変えて行くし、些細な事でも自分に有益であればそれに乗っかって行く・利用するという人生なんですね。
本書を読んでいると、日々小池さんを見ていて、「あ!」と思い当たる部分が結構ある。「昔からそうだったのか。」とか、「そういえば、そんなことも言ってた。やってた。」ってことが、振り返るとたくさん出て来る。
秘密主義、したたかで、世渡り上手とでも言うのかな。特に対人関係においては、普通はそういうこと、出来ないでしょ?ってことを涼しい顔してやってしまうところが彼女の怖いところ。本人は計算しながらも、さほど意識することなく、サラッとやってのけちゃっているんだろうなぁ。また、マスコミを使っての自分の見せ方も恐れ入る。
男でも女でも出世するには野心もしたたかさも持たなきゃあそこまで上がれないんだろうけど、やっぱり相手を苦しめるような嘘はダメだし、人を大事に出来ない人は、人からいつかしっぺ返しが来るのではないかと思う。嘘をつかれた者は嘘をついた者より、そのことをずっと覚えているもの。だからその根は深い。
「排除します」━思わす小池氏が漏らした言葉ですが、これ、彼女の本性を表した象徴的なものなんじゃないかなって今でも思っている。芸能人のヒロミさんも「僕は“排除”発言は一生忘れませんので」っておっしゃっていたが、自分もそうである。リーダーになる人は、男でも女でも力があればどちらでも構わない。でもね、最後は人間味を捨てない人がいいなと感じました。「排除」なんて言葉、公の場所で人に対して使えるその神経がもうNGである。
最後に、個人的には本書に出て来た女性政治家たちの声が心に残っている。特に土井たか子さんの言葉がね。
結局のところ学歴詐称の件等、真相は小池氏にしか分からない。この本で明らかになるものではないと初めから思っていたし、そこに期待はなかった。読者は本書を読んで、今の小池氏と照らし合わせて判断するしかないのだ。
今、都知事として頑張っているんだから過去のことはいいんじゃない?という人も居れば、過去のことを忘れてはならないと思っている人も居る。人々のこの気持ちの根っこにあるもの次第で読み方も変わる本書。
でも、面白かったですよ。一人の人間のこれまでの育ち方、生き方、対人関係が、どう今と繋がっているかが手に取るように解って。
裏付けがあるとかないとか、憶測とか、言われているけど、巻末15ページにも及ぶ主要参考文献・資料の数だけでも相当のものがあり、面白半分で書かかれたものではないことが解る。
それよりも本書を読んで褒めた読者のことを批判するようなことが書かれていたものを読んだ。なんだかね、こんな風に乱暴に括られる方がむしろ気分が悪かったりする。
賛否両論ありますが、気になる方は読んでみるといいと思います。自ずと自分がリーダーに今、何を求めているのか解って来ると思います。