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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー・あらすじ・感想】おやすみ、東京 : 吉田篤弘

 

 

おやすみ、東京 : 吉田篤弘著のレビューです。

おやすみ、東京 (ハルキ文庫)

おやすみ、東京 (ハルキ文庫)

 

 

感想:あなたにとって午前1時はどんな時間?

 

午前1時の東京の街。

終電も終わった時間帯。若い頃はこの時間帯、結構好きだったなぁ。特に車から見る深夜の東京の街が好きだった。自分が、彼が、友達が、タクシー、運転する人が変われど、みんなが寝静まったこの時間、外に居ることの高揚感は格別なものがあった。空気が澄んでいるのか、信号機の青がいつもより鮮明で、なにもかもがリセットされていくような気さえする深い夜。

 

本作はいくつかの短編が少しずつ繋がって行き、ひとつの小説になっている。

 

・時計が一時を打った。

・時計がきっかり一時になった。

・時計を見ると、午前一時である。

・古びた時計が午前一時を指していた。

 

これらは各話の出だしの文章です。どの話も午前一時からはじまります。

 同じ午前一時でも、見ている時計はみんな違うし、状況も違う。そんな雰囲気がよく伝わってくる。

 

  

 

ある人は定食屋で料理を作りながら、ある人は仕事をしながら、またある人は寂しい夜道を一人歩きながら。中には、ハムエッグを食べる人、びわを泥棒をする人までもいる。

 

吉田さんらしいなぁと感じるのは、夜にしか走らないタクシー、その名も「ブラックバード」。洒落た名前ではないか。他にも夜にしか開かない定食屋とか、古道具屋とか。朝になると「夢だったのかも?」なんて思わされるような異空間的な雰囲気がいい感じなのである。

 

そんな雰囲気のなか、人々の人生がちらちらと見え隠れ。過去の記憶や、孤独、繋がりを感じながら東京の夜の空気に包まれるいく。

 

吉田さんの文章は厭味がなく、すーーっとしている。登場する人々もそう。だから、読んでいて疲れない。挿絵に登場する烏も夜の演出に一役買っている。

 

今夜も午前1時はやってくる。

毎晩この本を「午前1時」に開いてみるのもいいかもね。