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【レビュー】彼女たちの部屋: レティシア・コロンバニ

 

 

彼女たちの部屋: レティシア・コロンバニ著のレビューです。

彼女たちの部屋

彼女たちの部屋

 

 

 レティシア・コロンバニの書きたい世界が見え始める

 

同著の話題作であった「三つ編み」が面白かったので、次作の本書も読んでみました。今回読んでみて、なんとなく作者の書きたいこと、設定や構成などのパターンが見えて来たかなと感じました。

 

前作は3つの国の女性たちの話が並行して進む形、今回は同じ場所だけれども、2つの時代の話を並行して話が進むというものでした。いずれも、貧困、差別、暴力などの理不尽や困難に立ち向かう女性たちの話で、レティシア・コロンバニと言えば、このテーマというものを着々と確立して行っているなぁという印象があります。

 

さてさて、「彼女たちの部屋」です。読んでいる時はこのタイトルがいまいちピンと来なかったのですが、「三つ編み」同様、読み終わるとこのタイトルがじんわりと沁みて来ました。

 

今回は現代のパリと約100年前のパリを行ったり来たりします。

まず現代のパリでは、弁護士のソレーヌが仕事で挫折したところからはじまります。精神的に病んだ彼女は、仕事を離れ、セラピーの紹介を経て、「女性会館」という保護施設で「代書人」のボランティアを始めます。

 

この施設は差別や貧困、夫の暴力などから住むところを失った女性や子供が住む場所で、主人公ソレーヌが住む世界とは真逆な人々が集まっている。

 

ソレーヌは法学部出身。司法試験も受かり、法律事務所で長年の勤務を経験している。そんな彼女が「代書人」などというボランティア。まったく割りに合わないと、最初は乗り気ではなかった。やる気のない代書人と、色々問題を抱えている女性たち。上手くいくのだろうか?

 

早速、彼女たちの態度に戸惑うソレーヌだったが、やがて、彼女たちから依頼を受けるようになる。ソレーヌは、彼女たちのこれまでの家族関係や国の事情などによる複雑な事情を知ることで、やがて自分がこの仕事する意味や生き方なども見つめるようになる。

 

  

 

一方100年前のパリでは、救世軍のブランシュが、この街の貧困問題と戦っている。どん底に居る女性と子供たちが身を寄せられる施設を作ろうと必死になっている状況が綴られる。彼女の行動は、やがて政治家や財界人も動かす大きなものになって行き・・・・。

 

居場所を追われ、この施設に辿り着いた女性たちの話は、どれも本当に読んでいて辛いものが多い。しかしながら、ダンスのシーンなど明るさも忘れずに描かれている。少しずつ少しずつ主人公と女性たちが心を開き、交わっていく様子にも気持ちが上がった。なんにせよ、一筋縄でいかない事情や施設内での問題も多く、終始目が離せない展開ではありました。

 

本書は実在する保護施設と創設者を題材に書かれたそうです。重いテーマではありますが、レティシア・コロンバニの作品はとにかく読み易い。2つの物語が並行して進むけれども、特に混乱することもなく読めるのもありがたい。

 

装画は網中いづるさん。ついつい手に取ってしまいたくなる網中いづるさんの絵は毎回魅力的です。