種をまく人:ポール・フライシュマン著のレビューです。
ひっそりとまいた種がやがて・・・
ふと、植物に目を留めるのはどんな時だろう。
ゆったり散歩をする時はもちろんなんだけれども、意外にも人は忙しすぎたり、病気の快復を待っていたりす時ほど、この植物というありがたい存在に大きく救われる。
今もそうだなぁ。こんな時に見る植物たちの芽吹く様子に、どれだけ力を与えてもらっていることか。どんな時も、変わらずマイペースでいてくれる植物たちの存在はありがたい。
はじまりは、小さな種だった。
様々な人種が住んでいる貧困街の一角。
ゴミ捨て場化されていた空き地に、ベトナムの少女が自分の願いを込めて、ライマメをまき、ひっそりと育てることを決める場面からはじまります。
この一人の少女のまいた種が、近隣住民たちの関係、治安、環境、全てにおいてガラリと街を変えてしまうほど、大きな役割りを遂げたというちょっと良いお話なのです。
誰も見向きもしなかった空き地が、耕され、野菜が育って行くのと同時進行で人々のコミュニケーションも生まれる。
皆、ひとりひとり様々な過去があり、悩みや複雑な事情があるのだけれども、この畑を作ることによって、殺伐していた雰囲気から徐々に潤いを見せて来るところがなんとも感動的。
徐々に心をひらいていく様、教えたり、協力したり、そこはもう言葉や人種や、習慣も関係なく、「一体感」という素晴らしいコミュニティの誕生を感じさせられのです。
よく「土いじり」は精神的にすごくいいって聞きますが本当にそうなのかもしれない。
こんな出来事が世界のあちこちで起こるといいなぁ。
「あなたのまいたひとつぶの種が、もしかしたら、大きな変化をもたらすかもしれない。」
━━そんな夢がこの物語は語り掛けているように思える。