夫の墓には入りません:垣谷美雨著のレビューです。
感想・あらすじ 夫の死後、親戚との距離の取り方はどうする?
ことごとく話題になっている身近な問題を取り上げては小説にされている垣谷さん。タイトルを見ただけで何がテーマかも分かりやすく、ついつい手にしてしまいます。今回も辛辣な内容なのだろう......とタイトルから想像できますがいかに。
夫が早く亡くなる。残された妻は夫の両親や親せきとどうお付き合いをしていくかという問題が残される。同居と別居でその在り方は異なるでしょうが、本書の妻は「嫁を卒業できる」と軽やかな気持ちになったのも束の間、舅姑、小姑から頼りにされてしまうという状況に巻き込まれる。
お墓には早くも自分の名前が刻まれてしまい、いずれは年老いた舅姑の介護まで頼まれることになりそうだ。おまけにどうも亡き夫は生前浮気していたかもしれないという嫌な話も持ち上がる。
夫が亡くなれば単なる親せきだった人。.....とはならないのが辛いところ。でも、このままではこれからの自分の人生、お先真っ暗ということで、妻は実家に助けを求める。
そして、「姻族関係終了届」を役所に提出するのです。
この話は最近よく耳にするようなりました。中には先方に知らせず関係を終了される人もいるようです。
いざ介護の問題などが浮上した時、「私は親せきでもなんでもない」ということを突き付けることが出来るわけです。こういう届けがあったこと自体、ちょっと驚きと複雑な気持ちになるのですが、ある人にとっては必要な制度なのかもしれないなぁ、とも思うわけです。
結局は積み上げて来た関係性によるものも大きいでしょうし、経済的なこともあるでしょうから、良いとか悪いとか括れないものがあります。
本書でも紙きれ1枚ですっきりするとはいかないものがあり、縁をバッサリ切ってしまったことが本当に良かったのか自問自答する主人公の姿が印象的です。
ということで、妙にリアルでどこにでも起こりそうな問題。
自分だったらどうするだろう?と、誰もが一度立ち止まって考える内容であったと思います。