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【レビュー】断片的なものの社会学 : 岸政彦

 

断片的なものの社会学 : 岸政彦著のレビューです。

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

 

 

 

世の中には「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れないもの」がたくさんある

 

まさにさまざまな「断片的なもの」を集めたような一冊で、がっつり結論や正解をもとめるでもなく、ただそこにあること、ものを捉えて行く感じで掴みどころがない。

 

・・・という感想は岸さんの小説も同じ。本書から岸さんの日常を垣間見ながら、なるほど、あの小説で見た感性はまさにこの延長線上にあったのだなぁということがぼんやり理解出来て嬉しくなる。まさに断片的にいくつかのシーンが頭のなかに今でも残っている。

 

 

 そして何より感じたのは、岸さん、本当に人間が好きなのだなぁという事。いろんな立場の人々の話に耳を傾け、その人の人生と向き合う。また、自分の過去の体験がところどころに登場し、岸さんご自身のこれまでの歩みも感じ取れます。

 

 

 

「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れないもの」ということで、例えば今はインターネットのブログがある。有名人のブログは別として、無数にある無名のブログから見えるその人の世界。岸さんはそのようなブログにも目を通し、そこから見えてくるものを考察。「なるほど、そういう視点で読んでいるのか」と、とても参考になる。

 

特に『「ある異性装」のブログから』の話はとても印象に残っている。誰とも闘わない、最初からそうしたしんどい闘いが存在していなかった世界を、自分だけの箱庭で実現しているというブログは大変興味深い。このブログから私たちの社会が見る夢へと話は向かうのだが、もし、自分がこのブログを読んだ時、こんな風に捉えることができただろうか?きっと気づけなかっただろうなぁと思う。

 

データや数字も大事だけれども、こういうことをじっくり感じ取っていくことの積み重ねこそが、もしかしたら社会学者として才能なのかもしれないとも思いました。

 

岸さんのことは雨宮まみさんの本で知りました。岸さんと雨宮さんは同じような孤独な空気感があり、読んだ後もその余韻がどこか似ている。

残念ながら雨宮さんの文章はもう読めないのですが、岸さんの文章や感性に触れるたびに彼女のことを思い出さずにはいられない自分がいる。

 

 

ということで、何度もこころに響く言葉に出合える本書だけれども、つかみどころはない。でも、このスタンス、空気感がなんだかとっても心地よいのです。

 

あと、何気ない風景写真もいいです! いつか、岸さんの文章と武田花さんの写真のコラボって出来ないかしら?と、勝手に妄想しています(笑)沖縄の路地と猫なんか良さそう~♪