僕の人生には事件が起きない:岩井勇気著のレビューです。
いや、小さな事件は起きてる!?
失礼ながら、なんとなく見覚えのある芸人さんと言ったイメージしかなかったのですが、なにかの番組でこの本がとても面白いと聞き、読んでみようと。読みはじめて「あぁ、ハライチの人かー」と。相方の澤部さんは、はっきり顔も分かるのですが、岩井さんはうっすらとした記憶しかなかった。(本当にすみません)
とは言え、ご本人もそのあたりのことを心得ているのか、「まぁまぁ世に名前が知られているコンビの、陰に隠れがちの方」と、冒頭に書かれている。そんな岩井さんのもとに「小説新潮」から書いてみないかと依頼があったそう。文章はネタやTwitterくらいしか書いたことがないとご本人。
でも、数ページ読むと「えー本当なの?」って思うくらい、スラスラと文章を書かれているではありませんか。不自然さやぎこちなさがない。むしろ書き慣れている感があるのです。
「日常に潜む違和感に芸人が狂気の牙をむく、ハライチ岩井の初エッセイ集!」ということで、日常の中にあるちょっとしたことを綴っているのですが、この「ちょっとしたこと」の切り取り方が、やはり芸人さんだからなのか面白い。なんとなくネタっぽいと感じるものも少しはあったけれども、それでもクスクスと笑いながら読み進めてしまいます。
芸人と言えば苦労話が定番だったりするけど、岩井さんは普通の家庭で何不自由なく育ち、芸人としても下積みが短く、それほど苦労せず、なんとなく今のポジションにいる方。ご自身も人生を振り返って「波乱万丈ではない」と言っている。だからなのか、文章もいたってニュートラルな雰囲気。くせもなくサラサラ~と読めてしまいます。
現在は実家を出て、一人暮らしをしている岩井さん。家の隣が墓地、という場所に住んでいるらしいが、こういうことにもあまり動じず住めるあたりのおっとりさが岩井さんならではなのだろう。
しかし、幽霊が侵入してくるピンチ!?が訪れる。果たして幽霊の侵入は防げるのか??
読んでいるうちに、ちょっとした短編集を読んでいる感じになって行きました。強い印象を残すようなものではないけれど、なんとなく癖になるって感じでしょうか。
表紙の岩井さんを見ながら、この感じがそのまんま本になっているなぁーと感じました。そのうち「本も書いている岩井さん」ってことになるかもしれないですねぇ。
「人志松本のすべらない話」は出たことがあるのかな?岩井さんなら、面白い話、たくさん出来そうだなぁということもチラッと思いました。