うずまきぐ~るぐる 

読書書評ブログへようこそ!読んだ本についてのあれこれを思いのままにぐるぐるかきます。

【レビュー】善魂宿:坂東真砂子

 

善魂宿:坂東真砂子著のレビューです。

善魂宿 (新潮文庫)

善魂宿 (新潮文庫)

  • 作者:坂東 真砂子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2004/11/28
  • メディア: 文庫
 

 

長い人生の中で、極楽だったあの日とは?

 

圧倒されっぱなしだった「山姥」。坂東さんの作品を続けて読む気力がなかったわけだが、ここにきてまたぞわぞわと導かれるように読みたくなった。そこで今回選んだのが「善魂宿」。

 

飛騨の白川郷がモデルとなったと言われる人里離れた山奥。母とその息子がひっそりと暮らしている。道に迷った人々が通りかかるこの家。「一晩とめてください」と親子の家を宿代わりに使う者が多い。

 

そんな彼らが語る話は、やはり、やはりインパクトの強い驚きが!
なかでも老婆が語った「盆嬶=かか」という話が、昔ならありそうといった内容で、頭の中に強く刻まれてしまった。

 

「盆嬶・かか」とは15歳になった娘がお盆の三日間、神様が決めた相手の妻となって一緒に生活するという風習があり、その日にくじ引きで相手の若い男が選ばれる。その夫役の男のことを「盆嬶・かか」という。

 

数組の夫婦がひとつ屋根の下で暮らす三日間。この日を待ちわびていた主人公の少女が長い年月を経て、当時の様子をこの「善魂宿」で語る。老婆は当時の盆嬶ではなく別の人と結婚し、子供も産んだ。しかし老婆はこう語る。

 

「そうさなぁ、あの盆の日を一緒に過ごした、特別な人なんだよ。あの人の中には、あの日がぎっしり詰まってるみてぇな....。おらの人生、いろんな日があったけど、あの日は、あの盆の三日間は、なんつぅたらええんだろ.....極楽のような一日だったんだ。もし、寿夫さんにまた会うことができたら、またあの日に出会えるんでねえか、そんな気がしたんだよ」

 

 

 

 

確かにこの三日間の様子は大人たちの干渉もなく、若者たちがのびのび生活をしている。それは今で言う修学旅行のようなものでもあるのですが、夜の場面は淫靡な世界にチェンジ。しかし、初体験の描き方もどこかあっけらかんと描かれ、初体験の初々しい感じとはひと味違う。それにしても、結婚するでもない相手と敢えて関係を持つという風習のようなものにもびっくりです。しかもくじ引きで決めるなんて!!

 

そんな習わしとは別に、老婆のずっと胸に秘めていた乙女心が胸を打つ。遠い青春時代を回想する話ではあるのですが、なんとも不思議な気分にさせられました。そして、老婆の存在自体も、この世の者ではないような煙に巻かれる雰囲気で終わるのです。

 

合掌造りの家には当時20人から40人もの家族が共に住んでいて独特の家族制度を形成していたという。当時どんな様子であったのか、筆者はわずかな資料をもとに想像を駆使し、この作品を生み出した。だから、大方想像でしかないわけだけど、なかなか興味深い話と生々しさがあったと思う。

 

なんだろう、坂東さんの小説は独特なものがあり、小説の世界からこっちに戻るのが大変でもある。でもしばらくすると、また戻りたくなるような・・・また2~3か月後に発作が起きそうです(笑)