愉楽にて:林真理子著のレビューです。
源氏物語の男どもの現代版!?
林さんの長編、久々に読みました。相変わらず富裕層の人々をよく観察しているというか、こういう設定は林さんの得意分野と言っても良いのではなかろうか。
登場人物の行動云々は置いておくとして、出てくるホテルやらマンションやら病院やら本当、お金持ちの行くようなところがリアルに登場するせいか、雲の上の人々の生活ってこんな風なのかと羨ましいと言うより新鮮。
そして、何といっても彼らの会話が妙にリアル。京都のお茶屋さん界隈の話なんかは、きっと林さんご自身が小耳に挟んで来たものに肉付けされたのだろうと想像しています。世の中、上流社会にしか知り得ないことってたくさんあるんだろうなぁ。
主な人物は50代のぼんぼん男性2名。一人は大手薬品メーカー九代目・久坂。シンガポールと日本で生活。あっちにもこっちにも女性の存在があり、性懲りもなく情事を重ねている。膨大な資産を所有し、会社では副会長と言うポジション、仕事はそこそこにして悠々自適な生活。
もう一人は久坂のスタンフォード留学時代の友人、田口。老舗製糖会社の三男。しかも亡くなった妻もお金持ちで莫大な遺産を残す。高齢の母親との関係がかなり近く、マザコンっぽい面も。そして、中国人女性と恋に落ちるのだが、これがまた転げ落ちるような展開になる。
ということで、あくせく働くことに無縁の男たちが女に現を抜かし、優雅な生活を送っているという源氏物語の男どもを彷彿させられるような世界でした。そこを狙ったのかしら?と思わないでもない。
50代男性でこんな生活している人はいるの?いや、知らないだけで世には結構居たりするのか?そんなことを揺ら揺ら考えながら、しかし人の心を動かすことの難しさ、そして、健康はどんなお金持ちでもどうにもならないものなのだなぁ....と言う当たり前のことが妙に心に響いてくるラストであった。