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【レビュー】澪つくし:明野 照葉

 

澪つくし:明野 照葉著のレビューです。

澪つくし

澪つくし

  • 作者:明野 照葉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 単行本
 

 

彷徨いつづける亡き人々の・・・

 

 

ちょっと気になっていた明野 照葉さん、初めて読んでみました。

がっつりホラー系を想像していたのですが、これがまたちょっと哀しい人間ドラマのあるゾクゾク系とでも言いましょうか、何というか、怖いと言えども「納得」するものが多く、あぁ、そういう過去があったからこその話なんだなということが分かる。

 

しかし、設定自体はどれもこれもこの世とあの世の境界線という曖昧な世界を彷徨うようものが多く、いつの間にかあの世の世界に足を突っ込んでしまったような怖さが漂う。

 

多分居るのだ。

見えても見えなくても死者の気配がそこかしこに感じられる場所があるのだ。引っ越し先の家にまでついて来た亡き家族。最初はそれだけだと思っていたら大間違い、次々に亡者の気配を感じるその家は、かつて「辻」にあたる場所だったという過去が。辻という場所の持つ意味などを絡め、混沌とした世界へ誘われる話は流石に怖い。

 

 

 

「雨女」から続く「澪つくし」は非常に重苦しい話。
兄の伸一が入院したということから始まる。兄の衰弱していく様子だけでも息苦しい内容であるのに、その妻である蕗子が輪をかけてこの話を暗く憂鬱なものにしてゆく。

 

義理の姉である蕗子のことを義理の弟である邦男は実はあまり知らないのだ。彼女がどこで生まれたのか、どういう人なのか、ちょっと苦手だと思っていたくらいで何一つ知らない。兄の病をきっかけに話すようになったわけだが、その印象は変わらず。

 

蕗子は兄が病気になったのは自分のせいだと悔やみ謝るのだ。なんで彼女は自分を責めているのか?この謎を紐解いていくことになる話は、蕗子の生まれ育った場所と深く関わりがあり、何代にも渡って引き継がれている重い話へと広がって行く。

 

本書は亡くなっても尚もこちらの世界に思いを残している者の話であったり、その逆、死者に対して生きているものが何かしらの思いをずっと抱えていたり、そんな思いの数々がどこかで交わり、不思議な現象を起こしているように感じる。死んだことすら気づかずに彷徨い続ける者の哀しさが、この本の中に漂っているような気がします。

 

初めて読んでみて、「面白かったからすぐ次の作品を!」という感じではなかったのですが、忘れたころにまた読みたくなるような作風であると思います。しっとりとした怖さを欲したら、また読もうと思います。