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【レビュー】田舎の紳士服店のモデルの妻:宮下奈都

 

 田舎の紳士服店のモデルの妻:宮下奈都著のレビューです。

 10年は長いのか、短いのか?ある主婦の10年を辿る

 

大きく環境が変わってからの10年間。ごくごく一般的な主婦がその10年をどう生きたのかを辿っていく話は、時にものすごく息苦しかったり、ハラハラさせられたりしながら、どうにかこうにか乗り切った感が良かった。

 

夫が鬱病になり会社を辞め、東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。二人の子供を引き連れ、田舎へとやって来たのだが、都会とはまるで違う日々に戸惑いながらもスタートを切る。

 

 

 

梨々子の日常は、東京を出るときに友人からお餞別でもらった「10年日記」で綴られていく。30歳から40歳までの10年間。そこには、夫、子供、母、友人、ご近所さん等々の関係や日常が詰まっている。なかには一時、夫以外の男性に心を奪われるという危うい場面もありました。

 

振り返ってみると、梨々子はいつも何かに葛藤していた。なにがどう辛いのかは振り返ってみると意外にもぼやけている気がする。じゅくじゅくとした傷がなかなか治らないような苛立ちのようなものが常にある感じ。でも時がくればそんなことを自然に意識しなくなるのと同じように、次第にこの地に溶け込んでいく梨々子を私たちは感じ取って行きます。

 

決して良好とは言えない夫婦関係、田舎生活での不安や焦り、昔の友人とのメールのやり取りなど、日常に横たわる靄のようなものを丁寧に描いています。大きな波はないけれど、寄せては返すを繰り返しながら行き着くところに行く着く。

 

あくまでも「私」主体であるせいか、とても裡にこもったような印象が残る。夫や子供たちのことよりも、丸々主婦である「私」の心の様子を誰かに知って欲しいと言わんばかりに感情が溢れ出ている一冊でもありました。

 

子育て中の方や転勤などで違う環境に身を置いている方、10年後の自分なんて想像できない、したくない、なんて方におすすめです。梨々子と重なる部分があるかも!?

 

いつかは出口が見えてくる。そんな気持ちで梨々子の世界から抜け出した気分で読了。

 

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