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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【感想・レビュー・あらすじ】鯖:赤松利市

 

 

鯖:赤松利市著のレビューです。

鯖 (徳間文庫)

 

感想・あらすじ この小説の真の舵取りは誰だ?

 

新潮社の中瀬ゆかりさんがテレビで紹介していた一冊。話題性があり、最近あちこちで見かける赤松さんのお名前。大型新人っぽい匂いがしたので、読んでみよう!

 

鯖缶ブームというちょっと浮かれ気分からは程遠い闇深い内容です。漁とビジネス、人間関係、裏社会、そして殺人と、読み進めるほどズブズブと泥沼にはまっていくような薄気味悪さ。そして、グロテスクな殺人行為へと続き、一時も休まらない話でした。

 

 

 

舞台は日本海に浮かぶ孤島。かつて「海の雑賀衆」として活躍していた男たち。現在は一本釣りで日銭を稼ぐのにいっぱいいっぱい、貧しい小屋で共同生活を営んでいる。年齢もバラバラである男たちは曲者ぞろい。気性が粗く喧嘩も絶えないという殺伐した生活であったが、ある料亭の女将との出合いにより、ビジネス的な漁に変化していくのだが、それが彼らの将来を大きく変えていくものになる。

 

ビジネスを機に登場するのがアンジという中国人の女性。彼女がこの小説を揺さぶる大きな存在として君臨する。そしてもう一人、劣等感の塊である主人公シンイチ。彼がお金を手に入れたことにより、どんどん悪い方へと豹変していく姿は、本当に見るに堪えないものがある。

 

一体誰が人々を牛耳っているのか?そこも気になって気になって先へ先へと気持ちを掻き立てられます。

 

とにかく、きな臭い、生臭い、男臭い、という臭気がそこかしこからしてきて、嗅覚から何だかやられていく感じも妙なもの。面白いは面白い。けれども、いとも簡単に人の命が奪われ、残虐な形で葬られることに、やはり抵抗を感じずにはいられない。小説と割り切れればまた違うのでしょうが。

 

この作品、赤松氏のデビュー作だそう。スゴイなぁ。雰囲気的には西村賢太氏を彷彿させられるものがあった。この先も、ダーク路線を突っ走りそうな気配の赤松氏。「ボタ子」という新刊のタイトルがまた私の目の端にチラついてならない。たぶんきっと、読んでしまうのだろう。

赤松利市プロフィール

1956(昭和31)年、香川県生まれ。2018(平成30)年「藻屑蟹」で大藪春彦新人賞を受賞。『鯖』『らんちう』『藻屑蟹』『ボダ子』『風致の島』『犬』『アウターライズ』『隅田川心中』などの著書がある。(新潮社・著者プロフィールより)

文庫版

鯖 (徳間文庫)