ミシンのうた こみねゆら著のレビューです。
カタカタカタは懐かしい音
この本を手に取ったとき、あの懐かしいミシンの感覚が蘇りました。
足と手を連動させると、カタカタという音が鳴り始め、それがとても「おうち的」な耳触りで心地良い。
カタカタカタ カタカタカタ
ミシンが歌い始めます
お店で見習いの女の子がまんまるいつきがのぼったよるにミシンに呼ばれ、憧れのミシンにそっと触れてみる。
気づけば布を手にとりミシンで服を作り始める。
当然、店の主人に翌日怒られるわけだが彼女の作った服を気に入って買ってくれるお客さんがいる。怒られても、怒られても、彼女はミシンを踏み続けるのです。
なにかに夢中になっているときって声がかけられないほど 特別な空気がその人に漂う。本書の女の子が服を作っている姿はまさにそう。彼女の目には布とミシンの音だけしかきっとない。それは嫉妬しちゃうほど、とても幸せそうなのだ。
たとえ翌日怒られようと、その時はそのことに一心を注ぐ。
やがて彼女の作った服を買う人もいなくなるのだが・・・・。
ラストはいろんな捉え方が出来ると思う。
しんみりしないではないが、大好きなミシンで作った服とともに、彼女の戻るべき場所に帰ったのかな~、そんな風に私は感じました。
なかなか夢中になれるものが見つからないといわれている昨今。
夢中になることがこんなにも幸せなんだということを改めて感じられたおはなしでした。