寿命図鑑:やまぐちかおり著のレビューです。
嗚呼、寿命・・・悲しい響きではあるけれど。
寿命・・・悲しい響きではあるけれど、「寿命だから」と、諦めとも納得とも言える意味も含むこの言葉。「寿」がつくのだから本来はおめでたいことなのかもしれません。
本書は命あるものの平均寿命を集めたもの。あの動物やこの植物、いつも居るような気がするけど実は寿命が短くてびっくりさせられるものが多い。
「ほんとうはもっと生きられます」━━寿命2年
これは牛(肉)の叫び。本当は20年なんだけど、2~3年育てられ、そして人のために加工されるという。このような切なくなってしまうようなものから、寿命100年のガラパゴスゾウガメまで、まずは動物部門で「へー」「ほー」言いながらウォーミングアップ。
海の生き物、鳥、昆虫、植物と続き、
食べ物、モノ、機械、からだとなど続々と登場。
モノの主な例は、
「力士のまわし」寿命1年、「お札」寿命4.5年など、思わぬものが登場して、「おぉ――」的な驚きも!
そして何といっても長寿は我々が毎日手にしている「本」。
本の寿命は紙の寿命ということで、洋紙は100年、和紙は1000年。
寿命としては350年になっていた。
ん~~、今手にしている本がこれから何百年も人とともに生き続けるのかと思うと感慨深い。
他にも世界の人々の寿命や建物など、本当にたくさんの例が登場するわけですが、私が一番面白いと感じたのは「日本人の寿命」です。日本人の長寿はもう誰もが知っていることですが、じゃあ、縄文時代の日本人の寿命はどうだったのだろう?意外に知らない昔の日本人の寿命が、時代ごとに明記されています。
明治や大正は老人介護とかどうなっていたのかな?大家族だったから人手にも困らなかったのだろうか?と、常々思っていたのですが、なんということもない。明治は44歳。大正は43歳。楽しそうに暮らしていた江戸の人々にいたっては38歳というじゃありませんか。ひょっとして老眼も経験しないままだったり?・・・とまぁ、老後の心配をしている暇なくこの世を去っていたのですね。
昭和だって戦時中は21歳。50代を超えたのは昭和22年。46年になり70代超え。寿命に関しては本当に飛躍的に長くなっているのが解る。私たちの寿命は明治の人々の2倍も伸びたわけです。
この先新薬の開発も進み、ますます寿命が長くなりそうな世の動き。長生きは歓迎だが、福祉の充実がないままで長生きするのもそれはそれで大変なことである。
人間の寿命は一体幾つくらいが幸福なのだろうか?
・・・なんてことまでも考えてしまった「寿命図鑑」。
どの絵にも天国行きの黄色い天使の輪が頭上に描かれているが、それがなんともキュートであり物哀しい。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
お気楽に読んでいたつもりが、こんなフレーズまでもが頭の中で回り出すという事態へ(笑)
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