おんなのかぶ:沖田修一著のレビューです。
中年以降の女性たちが力を合わせて・・・
掴みどころのない話なんだけれど、要所、要所、中年以降の女性たちの発する言葉に
ドキッとしたり、笑いたくなったりと、ページをめくるのが次第に楽しくなる。
所沢市の主婦、浦上信子さん55歳。
近所のサミットで買ってきたかぶの種を蒔きました。定年退職した旦那さんが毎日家にいるので、顔を合わすのがとても嫌で庭いじりに精を出す。島忠で買ってきた、灰と肥料を蒔き、庭には野菜や草花が茂ります。そして、かぶを抜こうとするのですが・・・・。
ひとりでは抜けないことから、友人や、隣人、通りがかりの人を呼び寄せ、女たちが力を合わせてかぶを抜きます。なかなか抜けないかぶ。だから人もどんどん増えて行く。
しかし、おばちゃんたち、体力がない。
ちょっとやっては、「休憩~」「とりあえずお茶~」。
そしてたわいもないお喋り!
モーラステープを貼るときの粘着力に苦戦とか、白髪染めは「へナ」が良い良いと言いながらも、「へナってなに?」の問いには誰も答えられないという締りのない話とか。
子供のお古の大麻Tシャツにマサイ族の靴を履いているおばちゃんがフラッと入って来たりと、あっちこっち話題が点在していて、これぞおばちゃん達特有の会話って感じで、思わずニヤニヤしてしまいます。
また、みんな仲良し・・ではなく、「ほどほど」の人間関係。
しかし「かぶ」を抜く情熱は何故だか皆強く、そこだけは異様な一体感が(笑)
さて、すでにもういろんな人が登場し、そろそろ抜けるのでは・・・というところまで来ているのだが・・・ここで、リチャード・クレイダーマンが「ハロー」と声をかけてくる!
なんじゃソレ!なんでリチャードなんだ!?
もう、ひっちゃかめっちゃか!という感じでなんだけど、「とにかく最後まで見届けなければならぬ!」と、ラストへ向かいます。
かぶ抜きを通して、女たちの人生が見え隠れする話は、笑いあり、不思議と哀愁あり。そこから何かを学ぶとかそういうことはないのだけれど、会話の端々から、どこか身に覚えが・・・どこかで聞いたような・・・という親近感があります。
ほら、聞こえてきました。
「私、最近、喪服でしか、スカート履いてないわ」誰かがぼそっと言いました。
※この本を見たとき絵本の「おおきなかぶ」を思い出しました。
あちらもかぶを抜く話。しかし「おんなのかぶ」は一定の年齢以降の女性じゃないと解らない話題が多い(笑)