マイナス50℃の世界 :米原万里著のレビューです。
バナナで釘を打つシーンが思わず浮かぶ、マイナス50℃の世界
いやぁー面白かったです。
マイナス50℃が具体的に想像がつかないという私にとって初めて覗く世界に新発見がたくさんあり、楽しかったなぁ。
本書はTBSが企画した「シベリア大紀行」という番組の取材でシベリアのヤクーツクへ米原さんは取材スタッフの一人として参加し、その時の内容を綴ったもの。
取材前に魚用の冷凍庫でカメラや防寒具のテストをしてから出発したという取材班。そんなスタッフたちが見た世界とは…。
寒い→氷→滑る
米原さんも言っていますが、これは暖かい国に住む人間の常識であって「寒いと氷は滑らない」というのである。だから、車にタイヤチェーンやスタッドレスは不要。スキーやスケートは、春先の暖かくなったときの遊び…ってどんだけ寒いんだ!!!
魚を釣ればあっと言う間に冷凍。
凍傷の恐ろしさ、三重窓が当たり前の住宅、そして毛皮の重要性、等々…「へぇーへぇー」の連続であった。
こういう厳しい環境の中で暮らすことは、さぞ不便で大変だろうと思うのですが、「モスクワやレニングラードのマイナス30℃よりヤクーツクのマイナス55℃の方がしのぎやすい」と言うではないか!
なんでも湿気が多く風が吹くから寒さが骨身にしみるとか…。うわうわっ…もう寒さに対する感覚のレベルが違いすぎます。でも本当に人間の順応性ってスゴイもんですね。
取材には椎名誠さんも同行していて、本書の解説を書かれています。こちらもトイレに関する興味深い内容で、本も書かれているそうです。追々そちらのレポートも読んでみようと思います。
「寒い、寒い」と背中を丸めて布団から出るのが辛い時期。「あまったれたことは言ってられませぬ」と、この本を思い出し、自分を奮い立たせ起き上がることも覚えました(笑)
ということで、どの章も驚きの連続と想像寒さでプルプルしちゃいます。写真もたくさん掲載。装丁の写真を眺めるだけでも寒さが伝わってきますよ。
******追記******
この本を冬に読んだのですが、むしろ夏に読むべきだったなぁと振り返って思います。そろそろまた暑い夏がやって来る。寝苦しい夜などに読むと、ひんやりした気分になれると思いますよ!いや、そうでない方も一度是非、本の中だけでも寒い国の住人体験をしてみませんか?