とむらう女:ロレッタ・エルスワース著のレビューです。
伯母さんの仕事「おとむらい師」を通して母の死を乗り越えた少女の話
この話は、母親を亡くしたイーヴィという少女が身近な人の「死」をどう受け止め、悲しみから脱したか…。その少女の心の動きを繊細に描いた作品です。
母親が亡くなり、やがて家には父親の妹がやって来るところから話がはじまります。母の領域に入って来た伯母のことを疎ましく思い、母親との違いを比べては
反発を繰り返す日々のイーヴィ。
お母さんとの思い出や形跡を消さずにいつまでもそのままにしておきたい。でも、時間は容赦なく流れ、周りの動きや環境も変わって行こうとする。
そんな時間の中で、自分も周りも母のことを忘れてしまうのではないかと嘆き、ジリジリとした気持ちで過ごしています。
それとは対照的なのが5歳の妹。
妹は幼いということもあり、伯母さんにも無邪気にすぐに馴染んでしまう。
それが、また少女の気持ちを複雑にさせ意固地にさせるのです。そんな不器用なイーヴィのすることなすことがせつなくて、胸がキュンキュンとし、抱きしめたくなります。
イーヴィの反抗的な態度はやがて伯母の仕事を手伝うことにより溶けていきます。
伯母の仕事は、死んだ人を清めて埋葬の準備をする「おとむらい師」です。
日本でも一時、注目を浴びた「おくりびと」ですね。アメリカの開拓時代は「とむらい女」と言って、女性達が神から託された仕事として誇りを持っていたそうです。商売ではないので、謝礼など一切もらうことはなかったと言います。
伯母さんの仕事は前々から興味を持っていたものの「死」は、恐ろしくて、悲しくて、近寄りたくないという気持ちの方が大きいイーヴィ。しかし、その仕事を手伝うことによって、「死」と向き合い、徐々に母の死も受け入れ乗り越えて行きます。
そこに辿りつくまでのこの伯母さんの姿勢も心を打たれます。どんなことにも動じずに待つ姿勢。穏やかに包み込む大きな気持ちを持ち続けます。
さて、この「とむらい師」というお仕事は人を見送るだけではありません。
そこにまた更なる感動が用意されていました。
YA本ですが、大人にも是非一度目を通していただきたいと思う1冊です。