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【レビュー】父と私の桜尾通り商店街:今村夏子

 

 

父と私の桜尾通り商店街:今村夏子著のレビューです。

 

不気味だねぇー、不気味を普通に描く不気味さが・・・短編も要注意!

 

わーわーわーーートラウマになってしまいそうだ!
しいたけとか干し葡萄とか・・・どうしてくれるんだ!

.....と、相変わらず表題からは想像がつかない展開を見せる今村作品。

 

今回は短編集でしたが、いくつかの作品は徐々に心拍数が上がって行くような、音で言うなら徐々にボリュームが上がって行くような、途中から怖ろしい勢いで迫りくる感じ。「もういいからーーやめてーー」と、気持ち的には逃げまくっていましたが、目が文章から離れられない。途中までかなり警戒して読んでいましたが、気づいたら言葉の渦に飲み込まれていました。

 

 

 

それを一番感じた作品は「せとのママの誕生日」。
寂れたスナックで働いていた元従業員3人が、そこのママのお誕生日を祝おうと久しぶりにスナックにやって来る。スナックはすでに外見もかなり朽ち果てた状態。真っ暗で蜘蛛の巣がはり、ネズミが横切る。窓ガラスも割れている。すでに不気味さいっぱいの雰囲気です。一番奥の部屋がママの部屋。恐る恐る入ってみると、ママはこたつで寝ていた。生きているか死んでいるか分からない眠りっぷり。

 

ママが起きるまで3人はかつての思い出話に花を咲かせるのだが、その話がどんどん訳が分からない不気味さを増していくのだ。増すというよりなんだか繁殖していくかのごとくぞわぞわと。

 

ネタバレになるので割愛するが、安倍公房の「カンガルーノート」を読んだ時の衝撃に近いものがあった。あちらは足からカイワレ大根が生えてくる男の話だったのですが、こちらの身体の異変も結構な衝撃があり、読み終わった後も不気味さの余韻が半端じゃなかったです。

 

ホラーでもなんでもない話なのかもしれませんが、ある意味ホラーより怖いという気がします。それでいて寂寥感漂う雰囲気もある。こういう設定でここまでの不気味さを描ける今村さんの力量に脱帽です。

 

意表を突かれる話がどれも面白いのですが、「せとのママの誕生日」はかなりインパクトが強かった。たぶん、この先、干しぶどうが落ちていようものなら「ひゃーー」と声を上げそうなわたしがいる。

 

 

 

芥川賞おめでとうございます! 受賞作品「むらさきのスカートの女」

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