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【レビュー】運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス) :ローレン グロフ

 

 

運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス) :ローレン グロフ著のレビューです。

運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス)

運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス)

 

 

後半まではちょっと忍耐がいる読書になるけれど・・・ 

簡潔に言えば夫婦の生い立ち、出会い、結婚生活を描いた物語である。はじめは家族になって二人で歩んでいく話なのだろうと想像していたのですが、読み進めるごとに孤独を感じさせられるものが積もって行く。様々な人々のあらゆる感情に出会い、その人たちの過去を知る。そのたびに何か得体の知れない不安や不気味さも増して行ったように思う。

 

 

 

電撃的な出会いから誰もが羨む美男美女のカップル誕生、情熱的な男女の姿、まるで灼熱の太陽の中に居るような熱烈な状況があれば、サッとそれが引いて行くかの如く一気に暗闇の中へ。乱痴気騒ぎの中に居たかと思えば、深い孤独の中に居る。光と影の間を行ったり来たりしながら気持ちに折り合いをつけていく読書は結構消耗するものである。

 

前半は夫の視点で綴られた結婚生活。後半はの妻の視点で綴られるという2部形式。
各々の視点を描くことによって夫婦のズレが見える小説はよくあるけれども、本書はそれとは違ったひねりがあるように思えた。

 

前後半、一続きであるようで、独立した話でもあるように思える。前半の夫の章は結構退屈なもので、途中で挫折しそうになったのだけれども、後半の妻の章から俄然面白くなるのだ。むしろ後半だけでも良いくらい。これまで不遇であった妻。夫の前では過去を封印していた妻の謎ともいえる生い立ちは、裕福なおぼっちゃま育ちの夫の生い立ちより、断然深みのあるものがあって読ませる場面が多い。

 

姑や友人などの邪悪な感情などもドロドロと吹き出したりと、頭の中がごちゃつくことが多かったけれども、終わってみれば妻であったマチルドの夫への愛情が遠くの方で小さく輝いている。やっと手に入れた自由と家族。希望と喜びに満ち溢れていた頃の彼女の束の間の幸福。そのページだけが切り取られ、私の心の中に留まっている。

 

この物語はいわゆる家族の物語と一括りにできない何かがある。