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【レビュー】むらさきのスカートの女:今村夏子

 

むらさきのスカートの女:今村夏子著のレビューです。

 

「不穏な空気」を描く作家として、今、一番油が乗っている作家だと思う

 

やぁ―本当に面白いですねぇ、今村夏子さんの小説って!

これだと思って飛び乗った電車で一安心してたら、全然違う電車に乗ってた。はたまた、白いハンカチ持ってたのに、気が付いたら黄色いハンカチを握っていた。こんな手品的感覚にさせられるとても不思議な体験を、まさか物語の中でするとは!・・・なんて気分にさせられるのです。

 

むらさきのスカートの女。
一見平凡なタイトルに見えますが、なんだかとってもミステリアスな雰囲気に思えてしまうのは、すでに今村作品を知ってしまっているからでしょうか。それとも一枚のスカートから二人分の足が出ている奇妙な装丁画のせいでしょうか?早くもちょっとした不安と期待を胸に、この「むらさきのスカートの女」に会いに行く。

 

近所に住んでいるむらさきのスカートの女のことが気になってしかたがない。わたしはむらさきのスカートの女を日々観察している。

 

案の定、ページから放たれる「むらさきのスカートの女」のなんとも言えない空気感。一体、何が起こるのかとザワザワした気持ちで読み進める。大きな出来事はないけれど、やっぱり少し変わっているむらさきのスカートの女。やがて、わたしとむらさきのスカートの女は同じ職場で働くことになるのだが・・・。

 

むらさきのスカートの女にはちゃんと「日野」という名前があるにも関わらず、筆者は「日野」という名前を無視し、狂ったように「むらさきのスカートの女」と書き続ける。数えはしなかったけれども、1ページに「むらさきのスカート女」という呼び名が何回も出て来ることによって、ますます得体の知れない人物が頭の中で出来上がって行った気がします。

 

そして中盤まではむらさきのスカートの女のことが知りたくて、彼女の動向をひとつも見逃すまいという気持ちで読み進めてきたけれども、次第にこの「わたし」は何故にこんなにも彼女に執着しているのかと、なんだか「わたし」の存在も徐々に不気味に見えてくる。

 

「不気味なわたし」と同じように、このころになると「読者の私」もまた、むらさきのスカートの女にに執着しているということに気づかされる。総じてむらさきのスカートの女に全てを持っていかれている感覚が恐ろしい。読者を静かに誘導する展開がもう絶妙!

 

そんなこんなでネタバレ避けるために具体的な出来事は触れませんが、「黄色」を投入することで物語に色が加わり、そして、曖昧模糊の世界へ突き落され読了。

 

嗚呼、また今村さんにやられたなぁと、毎度のことながらそれが嬉しくなるのでありました。

 

ホラーでもないのに、不穏な雰囲気の作品を描くのが本当に上手い。「不穏な空気」を描く作家として、今、一番油が乗っている作家だと思う。

 

 

 

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