ふたつの月の物語:富安陽子著のレビューです。
月に関係するふたりの少女の出生のひみつとは?
月が題材の小説はこころが騒ぐものがある。それもこれも、私が生まれた日はとても月のきれいな秋の晩だったという話を子供の時から何度も聞かされたというのもあるし、おまけに母は私の名前を「月」に関する名前にしたかったといまだに言っている。
だからかなぁ、「月」の様子はいつも気になるし、「月」を見ると無条件に元気になったり、胸がキュンキュンしたりする。「月」の本も無意識に手に取ることが多いなぁ。
本書も「月」に関係するふたりの少女が登場する。孤児院で育った美月。育ての親を亡くしたばかりの月明。彼女たちは、里子をさがしているという津田という富豪の女性から養子の候補として別荘へ来ないかと誘われる。
津田の里子の条件というのが変わっている。
・12年前の、4月生まれの女のことであること。
・両親および血縁者が一人もいない、あるいは所在が不明であること。
・出生場所・出生時の状況が不明であること。
・ただし出生につながる手がかりを有していて、その手がかりはなんらかの形で「月」に関連していること。
なんとも意味不明な条件なのだが、この条件に合ったふたりの少女は彼女の別荘を訪れる。そこではじめてふたりは出会い、津田の思惑がなんなのか?ふたりは協力して探ってゆく。
14年前、ダムの底に沈んだ村、大口真神を祀る夜神神社、村で行われていた魂呼びの神事。大口真神の存在、等々・・・謎の多い場所や人々に囲まれ、徐々に明かされるふたりの出生の秘密。少女たちの特殊能力をフル稼働させて、辿りつく結末は・・・。
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こういう物語、好きだなぁ・・・富安さんのちょっと不思議で懐かしい感じは、いつもすんなり世界に引き込んでもらえる。
死んだ人と通じる感じも元来怖い話になりそうなんだけど、そんな感じがちっともないのが自然でよい。巫女、儀式、狼、月などなど、ページのあちこちに気になるワードが散りばめられていて、わくわくさせられるのも実に楽しい。
余談ですが、装丁画のイメージって強いですね。酒井駒子さんだからかなぁ。少女たちは中学2年生なのだけど、実は私、もう少し小さい少女を想像しちゃっていました。
さて、つぎの満月ははいつだろう?はやくも月明かりが恋しくなってきました!