滅びの園:恒川光太郎著のレビューです。
◆話がちょっと壮大すぎて・・・・。
最終的には恒川ワールドと納得したものの、途中はSF色が強く少々戸惑いました。
個人的には、第一章の雰囲気が好きで、そのままいつまでも話が続いてた方がきっと読み易かったかもしれない....と思う反面、こういう展開も予想外で良いのかな~と、読み終わったあとも気持ちが揺れています。
家庭も仕事も上手くいっているとは言えないサラリーマンの鈴上誠一。ある日、電車を途中下車したころ一見普通の町だったのだが、徐々に様子がおかしいことに気づく。そこはお金は容易に手に入るし、人々との関係も良好だし、大変居心地が良い理想郷。彼は家に戻ることなくそこで暮らすことにした。
一方、地球では200X年1月19日、異変が起こる。プーニーと名付けられる謎の物体が出現し、それを食べてしまうとプーニー化してしまうというとんでもない事態が起きている。このプーニー、名前からしてちょっと可愛らしいし、お餅やプリンみたいに白くてプルプルしてるからあまり怖さは感じなかったのだけれども、それが増殖していく不気味さと言ったら・・・。
"抵抗値"というものがあり、このプーニーに対する人々の反応も様々だ。ある者はちかくにプーニーがいるだけで身体に異変が起きるが、食べても全然平気な者もいる。免疫のようなものでしょうか。この抵抗値の強いものたちが、地球を救おうと動き始め、やがて鈴上誠一の迷い込んだ異界と地球が合わさって話が展開されるわけだが・・・。
果たして彼はまたもとの世界に戻れるのか?そして人はプーニーをやっつけられるのか?
訳の分からない生物とか、殺し合いとか、世界的に話が壮大に広がって行くと、うわーーとなってちょっと辛い。ちょっと異界に入り込み、夢から覚めるようにまた戻るくらいが自分には合っているかな。
もちろん恒川さんの小説はそれだけに留まらず、現代社会の問題や人間の孤独の闇を潜ませることによって壮大な話が意外にも身近な生活の中からはじまっていくという怖ろしさを想像させられる巧みな小説となっている。
例えば、駅のホームで、エレベータの中で、トイレの鏡を覗き込んでいるときに。弱っている人の心に異界の入り口はどこにでもふと現れて誘ってくる。そんなことを終始感じさせられた小説でもあった。
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