吹上奇譚 第二話 どんぶり:吉本ばなな著のレビューです。
魔法にかかり始めた?第二話
昨夜読み終えて翌日にこのレビューを書いています。
「魔法をもたらすような秘密の書き方」ってなんだろう?第一話でつかめなかった部分。ずっと気になっていたんだけど、今朝、道を歩きながらこの小説を思い返し、「あ、なんかわかる気がする」と実感。あくまでも気がしただけですが・・・。
そしてそして、第一話のレビューで「いよいよばななさんの作品について行けなくなったかも?」と私は書いた。第二話の前半も私はまた同じように感じながら読んでいた。
その疑問に答えるかの如くあとがきでばななさんは言う。
「もうだれもついてこれないところまで来ちまったな、と思う」と。
なんだか自分の問いかけにばななさんが答えてくれてるかのように思えて笑みがこぼれる。そうか、ばななさん、確信犯だったんだな。
とても不思議な内容なんです。一話を読んだ方はすでに状況は承知されていると思いますが、意味不明な出来事に戸惑い、もがき、悲しみながらも先に見えるほんの小さな光を目指して歩んでいくような雰囲気を持つ小説ですが、なかなか理解しがたいオカルトチックな部分も多い。
しかし、読み終わってみるとなんだか気持ちがスッと整うような心地よさの中に居る。今朝、歩きながらわたしがこの小説に感じたちょっとした幸福感は、もしかしたらばななさんが運んできた「魔法をもたらすような秘密の書き方」によるものだったのだろう。
セックスだけの繋がりを持つ男女関係の虚しさ、若くして亡くなった可愛そうな女の子等々、哀しさが充満している中、眠り病から目覚めたお母さんはひたすら「どんぶり」を作り続けているといった、どこまでも変わった設定なんだけれどもなんだかとっても心に残る話だったなぁと思う。
これはもはや、小説というものではないものであるかもしれない。
主人公の若く幼い思考に合わせているから文法も変だし、構成もおかしい。もはや独自のジャンルのなにかになっちゃってる。そして、やりたい放題やっているな!これこそがほんもののカルトだな!
ばななさんはあとがきで本書をこう表現している。わたしもそう思います。誰もが受け入れられる内容ではないなと思います。でも、なんだか壁をぶち抜いてやりたい放題書いていると言われるこの作品が、私にはとても愛おしく感じられます。そして第一話よりグッと登場人物たちと距離が縮まった気がしました。
第三話も用意されているとのこと。今度はどんな魔法に包まれるのかな。とにかく二話を読んで、いろんなことが少しずつ掴めて来た感じが嬉しい読書になっています。