フェルメールの街:櫻部由美子著のレビューです。
◆派手な演出はあまりないけれども、
どこまでも長い影が残っているような雰囲気が味わえる作品だ。
「シンデレラの告白」がとても楽しかった櫻部さんのデビュー作。
気を抜いていたら2作目も出版されていて大慌てでした(笑)
さて今回はタイトル、装丁画、そして内容、すべてがヨハネス・フェルメール一色です。
日常とミステリーが程よく混じり合うストーリーで、気なる謎を抱えつつ、
フェルメールの居た時代や街を存分に堪能できます。
特に有名な「真珠の耳飾の少女」の青いターバンの少女の登場に「おぉ!」と前のめり。
フェルメールが夢中になって探している少女。
見つかりそうでなかなか会えないもどかしさったら。
彼女は何者なのか?気になりつつも日常は続く。
昔の著名画家と言えばちょっと気難しかったり、
心を病んでいるといった人物が多かったなか、
フェルメールは友達も多いし、周りの人々とも会話が多いという
ごくごく普通の青年と言った雰囲気だ。
ちょっと変わった妻と結婚し、家庭も築いている。
登場する人々も魅力的に描かれている。
特に大女で力持ちのバーブラの大奮闘ぶりに釘付け!
あまり登場はしませんが、その存在感はピカイチです。
そして、アントニー・レーウェンフック(微生物学の父とも称せられた人物)
とフェルメールの友情もこの物語の大きな魅力となっています。
内容的にどこまでが実話なのかは全く分からないのだけれども、
この街を、いつも好奇心を持って走りぬけて行くフェルメールと友達の
うしろ姿が今となっては愛おしく思える。
そしてわたしはこのフェルメールの居たオランダの港町・デルフトの
街の雰囲気がすごく凄く好きになった。行ったこともないのに懐かしささえ
感じてしまうほどだ。
アート小説と言えば原田マハさんが有名で演出上手だ。
押し寄せる感動の波に何度目を潤ませたことか。
櫻部さんの作品はそういった派手な演出はあまりないけれども、
どこまでも長い影が残っているような雰囲気が味わえる作品だ。
この先も異国情緒溢れる物語を書いていかれるのだと思う。
どんどん読みたいと思わせてくれる作品をこれからも期待しています。
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