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【感想・あらすじ・レビュー】紙の月 :角田光代

 

 

紙の月 :角田光代著のレビューです。

紙の月

紙の月

 

 

感想・あらすじ 横領事件を起こした女性…何故か責める気にならなかったという、まさに角田マジック!

 

「八日目の蝉」でもそうだったのですが、小説に出て来る主人公達は実際問題、とんでもない犯罪者という設定なのですが、何故か100%その主人公を責める気になれない…こんな気持ちを読者に持たせてしまう角田マジック!凄いと思います。今回も銀行のお金、約1億円も横領してしまった女性の話です。

 

埃っぽく暑い国、タイという舞台で逃亡している主人公の様子から始まる感じが、映像的で本当にうまい。

 

読者はすでにこの主婦・梅澤梨花が何をして逃亡しているのか分かっているので、ここからは順を追って彼女がどのようにして横領に至ったのかを知る作業に入るのです。

 

 

 

 

普通の主婦から働きに出た彼女は、生き生きと働く半面、どこかでボタンを掛け違い、転がるように犯罪に手を染めて行きます。

 

そこには、若い恋人が出来たことであったり…夫の違和感ある発言であったり…お金を使うことで得られる高揚感であったり…彼女が崩れて行くのはあっという間。色々な要素が絡み合い、そして取り返しのつかない状態になるのです。

 

そして、彼女の事件がニュースになると、友人たちの気持ちもザワつきます。「この犯人、知っている人なんだ」という、プチ自慢をしたくなったり、野次馬根性など、こういう時の人間のどうしょうもない心理なんかも、サラリと話の中に織り交ぜてくるあたりがニクイです。

 

お客さんのお金を使い出してから、上司にバレそうになるシーンが出て来るのですが「ヤバイ、ヤバイ、そろそろ逃げないと…」と気持ち的に共犯者になっている自分がいつの間にか居たりして…。

 

逃亡先で初めて自由を感じる梨花。こんなことで初めてその自由に気付けた彼女は果たして不幸なのか、幸せなのか。

 

 

 

 

それにしても、私は、この梨花の旦那さんが好きなれなかったです。「養ってやってる」とは言わないけど、終始そのような気持ちにさせられる発言や行動をする。梨花は何度もこの言葉に違和感を感じる。私はここが根源の気がするですが…ちっぽけな優越感に浸るこの男性、本当に嫌な奴です。

 

この小説、お金の怖さという観点もありますが、私にはこういった人間関係に潜む些細な言葉が大きな事件のきっかけになりかねない…そんな怖さを感じました。角田さん、本当に面白い!海外の舞台もどんどん小説化して欲しい~。

文庫本

紙の月 (ハルキ文庫)

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