ふたりの老女:ヴェルマウォーリス著のレビューです。
◆デンデ―ラ・アラスカ版?!海外にもいた!逞しい老婆が!
デンデラだけではない。
アラスカにも、捨てられ、そして頑張って生きのびた老女がいた。
作者のヴェルマ・ウォーリスは、アラスカに生まれ。
アラスカンインディアンの伝統にのっとった教育を受けて育った女性です。
今も昔ながらの狩猟・採集をしながら、執筆活動をされている方で、
本書は彼女の母親から聞いたことを綴ったものです。
こちらはデンデラと違い、老婆を捨てに行くのではなく、
置き去りにするという。
寒さが厳しく食べる物がなくなるという危機に陥ったグウィッチン族は、
一族を救うために、日頃「お荷物」になっていた2人の老女を雪の深い場所に
置き去りにしてしまうという、これもまたなんとも残酷な話。
集団のリーダーの下した結論に、老女の娘も何も反論せず
孫とともに去ってゆく。
極寒の何もない所に置き去りにされた老女二人に何が出来るのか?
絶望の中から始まるストーリーだが、黙って死を待つだけという道を
選ばなかった彼女たちは動き出す。
かつて食料が豊富に取れた場所へ移動をし、燃料を集め、狩を行い、
寒さをしのぐ衣服を作り、その年をどうにか乗り切る。
やがて季節は変わるが、次のシーズンに向けての保存食も大量に
作っておく毎日。
来る日も来る日も老人には過酷すぎるほど過酷な状況を突破してゆくシーンが続く。
彼女たちはかつて学んだ「生活の知恵」を駆使するのだが、その姿は頼もしく、
今まで若者に頼って生きていた弱い老人にはとても見えないくらい変化してゆく。
もちろんクマーも登場しますが、こちらの老女たちは熊と共存する形で、
うまく関係を保っていた。お見事!
さて、この話、ふたりの老女が危機から脱しておしまいではありません。
老女を置き去りにした場所に再びあの集団が戻って来ます。
この年の冬もさらに厳しく、集団は再び生死の淵に立たされています。
彼女たちの死骸がないことから、彼らは二人を懸命に探します。
その後、一行は老女たちと再会するのですが・・・・。
さぁ、自分たちを置き去りにした集団に何を言い、今後、老女は彼らと
どう向き合ってゆくのか?
いや~とにもかくにも、デンデラ同様、圧倒的なふたりの老女の
生命力に惹きこまれました。移動に要する体力なんぞは、どう考えても
私なんかより絶対ある。こんなに働いたら、私だったら確実に
寝込んでしまうわ。
もうダメだ・・・これが限界・・・・ってところから、這い上がる底力。
この本にも老女のパワーが漲っていた。
「もう年だから~ムリ~」なんて迂闊に言えなくなる一冊。
だってこんなに頑張る老人を見てしまったのだから。